「まったくとんだ邪魔が入ったものだ。ただでさえこの広い森の中で、1匹の虫を探すなんて至難の技だというのに。どうしたものか、トシ…」

予想外の状況に近藤は頭を抱えた。

「とにかく奴等にアレの存在をしられねーように気を配ることだ」

「価値にしたら国宝級ですからね。私も彼らにバレてはいけないと思います。ゆすられそう。」

土方の言葉に同意しながら、凛は金にがめつい兄の姿を思い浮かべた。

「うむ!なんとしても見つけ出さねば。みんな今のうちに腹ごしらえしておけ。今日は夜通し探索を行うぞ」


―――


夕食を済ませ、昼間仕掛けた罠の確認に行こうと凛は準備を始めた。そんな彼女のところに土方がやってきた。

「篠崎。お前も万事屋追い出し作戦に協力しろ」

「嫌です。」

凛の間髪入れない拒否の言葉に土方は固まった。

「はぁ?」

「相手は私の大切な兄と友達です。勝手にやるのは目を瞑りますが、実際見たら5年は最低でも職務以外では口をききません。」

そう言った凛の顔は美しすぎるほどの笑顔だったが、その笑顔の裏には般若が見えていた。彼女の圧に本気だと悟った土方は、そんなのは俺が耐えられないと思い、すぐに手のひらを返した。

「よし、篠崎は引き続きカブト狩りを頼む。」


―――


カブト狩りの状況は芳しくなった。お目当のカブトムシが見つからないのだ。

いったん集まった凛と土方の前には、褌一丁でハチミツまみれになった近藤と彼と全く同じ格好をした隊士たちが並んでた。

「おい、みんな。別に局長の言ったことでも嫌なことは嫌と言っていいんだぞ。」

土方は近藤に付き合ってる隊士たちを哀れに思った。

「いや、でもハニー大作戦なんで」

「せめて木に塗ってください」

土方の言葉でもハニー大作戦を辞めない隊士たちに凛はため息をついた。

「あれ?総悟はどうした?」

近藤は沖田がいないことに気がついた。

「総悟くんはまた別行動です。」

どうやらまた無茶な捕り方をしているらしかった。

「それにしても黄金色に輝くカブトムシかぁ」

そうなのだ。今回の任務は将軍のペットのカブトムシ『瑠璃丸』の捜索である。瑠璃丸はただのカブトムシではなく、黄金色に輝くまるで宝石のような出で立ちをしているそうなのだ。

「銀ちゃん!新八ィ!!見て見てアレ。金ピカピンのカブトムシアル」

あんなに捜索しても全く見つからなかった瑠璃丸があっさり見つかり、凛たちは驚愕した。

「いかん!それは…」

「待て!落ち着け。ここで騒げば奴ら瑠璃丸の価値に気づくぞ。様子を見よう」

「私も土方さんに同意見です」

近藤が焦って銀時たちの前に行こうとしたが、土方は面倒くさいことにならないよう近藤を止めた。凛も土方と同意見だったので、深く頷いた。

「あれは、あれだよ。銀蠅の一種だ。汚ねーから触るな」

「ほら見ろ。馬鹿だろ。馬鹿だろ。」

土方の予想通り、勝手に勘違いしてくれる兄の馬鹿さ加減に凛は感謝した。

「えーでもカッケーアルヨ。キラキラしてて」

「ダメだって。ウンコにプンプンたかってるような連中だぞ。自然界でも人間界でもあーいういやらしく派手に着飾ってる連中にロクなやつはいねーんだよ」

「頭が銀色の人に言われたくありませんよ」

欲しがる神楽を止めて、去っていく万事屋一向の背を見送り、今のうちに回収をと真選組は動いた。

しかし、タイミング悪く瑠璃丸は飛び去ってしまい、神楽の頭に乗ってしまうという更に最悪の状況に発展した。

「うおっ!汚ね!お前頭に銀蠅乗ってんぞ!」

未だ銀蠅だと思い込んでる銀時は、瑠璃丸を払おうと神楽の頭を思いっきり帽子で殴った。

瑠璃丸に何かあったら大変だと近藤は泣きながら近寄ったが、途中で躓き、瑠璃丸が乗ってる神楽の頭をチョップし、瑠璃丸を弾き飛ばしてしまった。

「いったいなァー!ひどいヨ!みんな!銀蠅だって生きてるアルヨ!かわいそーと思わないアルか!?あーよかった無事みたいアル」

瑠璃丸を取り戻すために、銀蠅じゃないと説明しようと近藤はした。

「待てぇぇぇぇぇ!それ銀蠅じゃないんだ。それっ…それ実は…」

「この子私を慕って飛んできてくれたネ。この子こそ定春28号の跡を継ぐ者ネ」

「か…神楽ちゃん!」

近藤の話を聞いてない神楽に嫌な予感がし、凛は引きとめようとしたが、神楽は瑠璃丸を連れて行ってしまった。

「今こそ先代の仇を討つ時アル!いくぜ!定春29号!」

「おいィィ!待てェ!それは将軍の…」

思わず土方が叫んだ言葉に銀時が反応しないわけなく、悪どい笑みを浮かべて立っていた。

「将軍の…何?」

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