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「銀ちゃん!!!」
「凛!どうしてここに?!」
凛は銀時と星海坊主がいるところに追いついた。しかし、さっきまでいた神楽の姿はどこにもなかった。
「そんなことより神楽ちゃんは?!」
星海坊主曰く、神楽はエイリアンの核に飲み込まれてしまったらしく、このまま核を破壊すると神楽ちゃんも命を落としてしまうという最悪の状況だった。
「聞けぇぇぇぇ!ターミナル周辺に留まっている民間人に告ぐぅぅぅ!直ちにターミナルから離れなさァい!今からエイリアンに一切放射をしかけるゥゥゥゥァ!」
大量の戦艦が空からやってきて、警告がされた。その声は凛もよく知る人物だった。
「あ…あれは!松平のおじ様!まずい…おじ様の砲撃のあとはチリ1つ残らないって言われてるわ。早くなんとかしないと!」
近藤が地上から説得するも、止まる様子のない松平に、星海坊主は銀時と凛に逃げるように言った。
「これだからよォ。世の中の親父は娘に煙たがられちまうのかねェ。お父さんさんよォ。あんたてめーのガキ1人しんじることができねーのかィ?あいつがこんなモンでで死ぬタマだと思ってんのかィ?5分だ。5分だけ時間を稼いでくれ。俺を信じろとは言わねー。だが!あいつのことは信じてやってくれよ!」
そう言い、銀時は自らエイリアンに飲み込まれていった。
なんて真似しやがるんだと驚く星海坊主に凛は小さく笑って話しかけた。
「星海坊主さん…神楽ちゃんを信じてあげてください。私も神楽ちゃんと私の兄を信じます」
地上では、真選組がエイリアンに応戦していた。
「どうすんだ!近藤さん!このままじゃ篠崎が…!」
「くっ…!とっつぁぁぁぁん!あそこには凛ちゃんもいるんだよ!もう少し待ってくれ!」
焦る土方と近藤が松平に待つように懇願するが、別のことを考えている松平の耳には何も届いていなかった。
しかし、そんな危機的状況に向かっているにも関わらず、核の上には、新八と定春、ハタ皇子と彼の爺やが増えていた。
「ったく、あの天然パーマが来るなら来るって最初から言えってんだよ。どうせ来ると思ってたけどね。」
「ふふ まぁ天邪鬼だからね。しょうがないわよ」
涙ぐむ新八に苦笑しながら凛は答えた。
星海坊主は神楽のために次々と集まる人々を見て、神楽の成長を肌で感じていた。
国際問題になると、松平の部下は報告するが、松平は娘のパーティがあるからという個人的な理由で砲撃のボタンを押した。
攻撃体制に気づいた新八たちは慌てたが、それと同時に神楽が銀時にアッパーをきめながら核から脱出してきた。
「うがぁぁぁ!それ私の酢昆布ネぇぇぇぇ!!」
「神楽!」
「神楽ちゃん!」
娘の無事な姿に星海坊主は喜び、凛はすぐに彼女の容態を見ようとかけよった。
「お前…」
「ったく…食い意地がはったガキだ。親の顔が見てみてーなァおい」
驚く星海坊主に銀時が軽口を叩いた。
「俺も見てみてーよ。お前みたいな無茶苦茶な男の親の顔を」
そんな銀時に星海坊主は口角をあげて笑った。
「いくぜぇぇぇぇ!お父さぁぁぁん!!」
「誰がお父さんだぁぁぁぁぁ!!」
そして、2人は刀と傘をそれぞれ振り上げて、核を破壊した。その証拠にエイリアンが次々と引いていった。
「とっつぁん!砲撃を止めろ!もつ撃つ必要はねぇ!!このままじゃ凛ちゃんも…!」
「泊めるぅぅ?ふざけんなァ。栗子はまだ17だぞ。彼氏と2人で誕生日を祝いたいとかぬかしやがったァ。あれ外泊する気だよ。絶対ェ許さねー。全力で邪魔してやる。ケーキの上で思いっきり、ランボーで踊ってやる」
「『泊める』じゃなくて『止める』!あんた娘のことしか考えてねーのかぁぁぁ!」
近藤は松平に説得を試みたが、娘のことしか頭にない今の松平に何を言っても無駄だった。
「うるせぇぇぇなぁぁぁあ!どうせもう今さら中止できねーんだろ。…あれ?凛ちゃぁぁぁん?!なんでそんなところにいんのォォ?!早く逃げろォ!大事な娘の凛ちゃんがいなくなったらパパ泣いちゃうよ?生きてけないよ?逃げてくれェェ!!」
さっきから近藤が何回も言っていたのに、やっと凛の存在に気づいた松平は自分でやったことなのにいけしゃあしゃあと言った。
「酢昆布返せぇぇぇ!!!」
上に逃げようとする銀時に神楽の回し蹴りがきまった。その後も何度も銀時を殴りつける神楽を星海坊主は、羽交い締めした。
「神楽!しっかりしろ!」
「出血は応急手当てしましたが、まだ意識が混濁してるんです!」
凛のその言葉を聞き、そんな状態で核をぶち破って来た神楽の中での銀時への想いに星海坊主は驚愕した。
「あー酢昆布だー」
神楽は星海坊主の残されたバーコードの髪をむしりとって、口に入れた。
「なにすんのぉぉ!お父さんの大事な昆布がァァア!」
「おいぃぃ!何食ってんだぁぁ!出せ!ハゲるぞ!そんなもん食ったらハゲるぞ!」
「神楽ちゃん!汚いからぺっしなさい!ぺっ!」
未だモグモグと口を動かす神楽に銀時と凛は必死で訴えた。
ゴォォォォォォ!!!
大きな音と眩しい光を感じて見てみると、砲撃がすでに発射されていた。
あ、終わった。と凛は目の前が真っ白になった。
ドガァァァァン!!!
砲撃が対象に見事に命中した。
「な、なんてこった…まさか凛ちゃん…!」
「「「補佐官ンンンン!!」」」
近藤や沖田が鬼気迫る顔をした。他の隊士たちも必死で凛を呼んだ。
「篠崎…」
そんな中で土方は自身の中で世界の色が消えていくのを感じた。周りの音も、匂いも、光景も、何もかもを彼は拒絶した。ただ、凛との思い出だけが土方の中を駆け巡った。
煙が晴れると、そこにあるはずのないものがあった。
星海坊主が傘一本で砲撃を受け止めていたのだった。左半分だけに残った髪を焦がして。
「ぼ、坊主さん!」
「俺もヤキが回ったようだ。」
「いや、髪の毛も焼きが回ってるようだけど」
「他人をかばってくたば」
新八と銀時が星海坊主に声をかけると、彼は言葉の途中で倒れた。新八と銀時そして凛は彼の元に駆け寄った。
「坊主さん!」
「おい、ハゲ!ハゲ!」
「ハ…じゃない!坊主さん!」
「ハゲ!…右側だけハーゲぇぇぇ!」
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