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―――真選組屯所
その日朝から、凛と土方は机を横に並べて、事務作業を行なっていた。
「篠崎。最近総悟が1人でこそこそ何かやっているんだが、何か知らないか?」
土方の問いに凛は考えて見たが、特に思い当たることはなかった。
「いえ、私は何も。確かに危険なことに首を突っ込んでたなら心配ですね…。」
確かに沖田は仕事をすぐにサボったり、ドSではあるが、見逃せないものを前にしたら自分の意思を曲げないところがあるので、凛は心配した。
「そう言えば今日総悟は非番だな…。篠崎、行くぞ。」
「はい。」
土方の考えが読めた凛はそのままからの後に続いた。
―――
「なかなか敵サンも尻尾を出さねーな。雑魚をやったところで何も出てこねーや。しかし、ちょっと暴れすぎたな。」
沖田は薄暗い路地裏で、のした天人の上に座っていた。
「オフの日まで仕事たァご苦労だな。」
「げ…」
沖田は聞き覚えのありすぎる声に、嫌な予感がして振り返った。
「お前がそんなに働き者とは知らなかったよ」
そこには嫌味を言う土方と苦笑した凛が立っていた。
―――
ファミレスのテーブルに凛、土方、沖田、そして銀時が座っていた。
「まま、遠慮せずに食べなさいよ。」
「何これ?」
「旦那、すまねー。全部バレちゃいやした。」
「いやいや、そうじゃなくて。なにこれ?マヨネーズに恨みでもあんの?」
銀時と沖田の目の前には、土方の大好物が置かれていた。
「カツ丼土方スペシャルだ。」
「こんなスペシャル誰も必要としてねェんだよ。おい、ねーちゃん!チョコレートパフェ1つ」
自分も初めて見たときは驚いたな。と凛は思いながら、自身の目の前にあるカルボナーラパスタを食べた。もちろん土方は彼女にも土方スペシャルを用意しようとしたが、彼女の有無を言わさない爽やかな笑顔にそれをするのをやめた。
「お前は一生糖分とってろ。どうだ?総悟。うめーだろ」
自身の好物をバカにした銀時に怒りつつ、土方は沖田に同意を求めた。
「すげーや。土方さん。カツ丼を犬の餌に昇華できるとは。」
「なーんだこれェ。奢ってやったのに、この敗北感」
「土方さん。そろそろ本題に入りましょう」
このままでは話が進まない、と凛は止めに入った。
「総悟にいろいろ吹き込まれたそうだが、あれは全部忘れてくれ。」
「ああ?その感じじゃあ、てめーもどういうことかァ知ってるみてーだな。大層な役人さんだよ。目の前で犯罪が起きてるってのに知らんぷりたァ」
銀時は鼻をほじって、そのまま鼻くそを土方スペシャルに飛ばした。
「いずれうちが潰すさ。てゆーか、おめェ土方スペシャルに鼻くそ入れたろ?謝れコノヤロー」
土方は自身の好物を侮辱する行為を尚も続ける銀時に青筋を浮かべた。
「だいたいてめーどころか、下手すりゃうちだって潰されかねねぇ連中なんだよ」
「土方さん、もしかして全部掴んでいるのですか?」
凛は昨日、煉獄関について聞かされたばかりだったので、全てを把握している様子の土方に驚いた。
「天導衆って奴ら知ってるか?将軍を思いのまま操り、江戸をてめー勝手に作り変えてる。この国の実権を事実上握っている連中だ。あの趣味の悪ィ闘技場はその天導衆の遊び場なんだ。」
その夜、煉獄関 最強の男『鬼道丸』が何者かによって殺害された。
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