天使の微笑み


本当にかっこいいね。
なんの意識もせず言葉がぽろりと出てしまった。

「ほとんど顔見えてないでしょ」

確かにそうだけど、その口布の下には想像もできないほど素敵な男前が隠れている事を私は知っている。

カカシとの出会いは、彼が任務でのチャクラの使いすぎによる入院だった。
私は一般病棟の看護師なんだけど、その時は忍の方々の特別病棟が満床で、カカシは寝れば治るからという理由で、一般病棟の空いている個室にやってきた。一般病棟と特別病棟は少し離れているから、担当はそのまま私に。
正直、荷が重かったけど本当に寝てるだけだったから、他の患者に比べて楽なものだった。

入院して一週間。朝の検温と血圧を測りに来た時に、少し元気になったカカシに話しかけられる。

「名前ちゃんは彼氏いるの?」
「へ?」
「可愛いから彼氏いるのかな?って」
「なんでもいいじゃないですか」
「ン、まーそうだけど。俺にとっては重要なのよ」
「冗談言う暇があったら、すぐに元気になって下さいね」
「つれないねぇ。そう言うのもキライじゃないよ」

患者さんからナンパされるのは良くあることなので、特に気にしていなかった。

でも、カカシが、ほかの患者さんと違ったのは退院してからだった。お花やプレゼントを持って病院に何度も訪れて来た。

「名前ちゃんいる?デート誘いに来たんだけど」

その度に他の患者さんや同僚から、からかわれる。やめてと言ってもやめないし、根負けしてついつい私は口からでまかせのつもりで言ってしまった。

「食事ぐらいなら良いですよ」
「ホント?じゃあ、来週には長期の任務出ちゃうから今週の金曜なんてどう?」

あまりにも嬉しそうに言ってくるから、嘘でーす!なんて、言えなくて。

「わ、わかりました」

これで最悪の自分を演じれば、カカシも嫌気が差すだろうと思った。

当日、また素敵なお花を持って来てくれるカカシ。

「お店は予約してるから。名前ちゃん、お花をどーぞ」
「ありがとうございます」

経験値高そうだな。なんて思ったり。
連れて行ってくれたお店は、小洒落た雰囲気の個室レストランだった。美味しそうな料理にお酒、最近忙しかったからテンション上がる。

「ステキでしょ?」
「はい。とっても」

少し薄暗い個室内、揺らめくロウソクの光がカカシの顔を照らす。

「……ッ」

口布を下げたカカシの顔、いつもぼーっとしてるから分からなかったけど、本当はとっても綺麗で男前で思わず見惚れてしまった。

「ご飯の時は、流石に下げないとね。そんなに見つめて、カッコイイ?」
「はい!え。あ、その、いや」
「名前ちゃんは分かりやすいね」

慌てる私を、ヘラヘラした笑いで見ているカカシ。

「もう、からかわないで下さい」

胸がドキドキして、耳が熱くてジンジンする。

なんだこりゃ。どうしたの私!

ドキドキしたまま食事をすすめ、いつの間にか時間が過ぎてしまった。なんだか分からないけど、ずっと楽しくて仕方なかった。

「任務の前に会えて良かったよ。明日から頑張れそう。帰ってきたら、また会ってくれる?」
「はい、私で良ければ」
「名前ちゃんじゃないと嫌だな、なーんて」
「そんな」

頬をいつの間にか赤らめていた私に、カカシは優しく微笑んでくれた。

「無事、帰ってきてくださいね」
「まさに白衣の天使だね」

私にギューッと抱きついてきたかと思うと、私の額に唇を落としていった。 

「じゃあ、またね」

一瞬で姿を消すカカシ。

「反則……」

それから1ヶ月後、またカカシが入院してきた。

「またボロボロになって、大丈夫ですか?」
「入院したら、毎日会えるのかなと思って無駄に張り切っちゃった。危うく特別病棟に入れられそうになったけど」
「本当に、無理しないでくださいね」
「名前ちゃんは本当に天使だね」

抱き寄せられ、頬にキスされる。
口布越しでも分かる体温にドキッとした。
流石に慌てて、私はカカシを突き飛ばした。と言っても、私の力じゃカカシはビクともしないのだけど。

「次は唇にキスしたいなぁ」
「……ぃ」
「そうだよね、嫌だよね」
「嫌じゃない…です」
「え?」
「カカシさんみたいな素敵な方なら、嫌じゃないです」
「それって、俺の事を?」
「…はい。カカシさんが任務に行ってる間、すごく心配で結果的には入院してるけど、あなたの声がまた聞けてすごく幸せを感じてるんです」
「やっぱり天使だね。前、入院して意識が戻った時、目の前に名前ちゃんがいて、俺は本当に天使がいると思ったの。笑顔でおはようと言ってくれて、俺天国に来ちゃったと思ったよ」
「そんな。大袈裟です」
「今まで優秀な医療忍者の治療は沢山受けてきたけど、どの治療よりも心も体も癒やされた。その時気付いたんだ、名前ちゃんのこと好きだって」

口布を下げるカカシ。明るい部屋の中でもやっぱり男前。そして、嬉しそうに唇を重ねてきた。

「これからも、俺の天使でいてくれる?」
「もちろんです」





天使の微笑み end.

prev 

[back]


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -