初恋C






翌年の砂の国での中忍試験で私は無事に中忍になった。

ベストに袖を通して任務に邁進する毎日。
前よりも、カカシ先生に相応しい女になれたよね?正直言って自信はないけれど、でも、もうこの想いを抱えるには私の腕だけでは足りなくなってしまった。

任務を終え、報告書を提出するカカシ先生を待ち伏せした。
報告所から出てきたカカシ先生の前に立ちはだかる。先生は相変わらず、まるでここに来るのを知ってましたと驚きもせずに私を見てニコリと笑った。

「カカシ先生!」
「どうしたの?珍しいね」
「い、一緒に帰りませんか?」

上擦る声。これだけで震えてしまう私。この先、ちゃんと言えるのかな、不安で仕方がない。震える私を見兼ねたのか、それとも運良くたまたま暇だったのか。

「いいよ」

そう言ってくれて、カカシ先生と並んで歩くのは良いけれど……。
重い、空気が重い。ちらりと隣を見上げれば、いつもの先生。もしかして、勝手に空気が悪いと思っているのは私だけかもしれない。
前を向けば夕暮れが終わりを告げようとする。美しいオレンジ色を暗闇が少しずつ飲み込んで行く。

「俺、こっちの道だけど」

分かれ道。カカシ先生が指差す先は私とは反対側。
カカシ先生の進路を塞ぐように、私はカカシ先生の前に立つ。そして、見上げる。
私とじゃ、身長差がありすぎて、遠くにあるその距離がそのままカカシ先生との距離に感じられて物悲しい。
それでも、その距離が1ミリでも縮まってくれれば……。

「カカシ先生、好きです!私を恋人にして下さい!」

一世一代の告白だった。

全身の血液が沸騰して、それなのに指先は緊張で冷たくなっていた。とにかく今の私は真っ白で必死だった。

「ありがとう。でも、おっさんの俺なんかより、同じ若い男の方が良いと思うよ」

あっさり振られた!分かってたけど、分かってたけど、やっぱり!落ち込むよ、だって、ずっと好きだったんだもん。

すると、カカシ先生はまだ俺の話は終わっちゃいないよ、と私の垂れた頭を持ち上げた。

「でも、大人になっても俺のこと好きだったらね。そしたら、考えてあげる」

一気に引き上げられた私の心は、カカシ先生への想いでいっぱいになった。

「わ、私は!ぜ、絶対大人になってもカカシ先生のこと好きですから!」

ーーだから、だから、覚悟して待ってて下さい!

私が声高に言えば、カカシ先生は目を一瞬だけ見開いて、すぐに細めた。その返事が、カカシ先生なりの優しさで諦めろと伝えて来たのだと気付いた時、私は頭から血の気が引いた。
息巻いた私と違って、笑みを浮かべるほどの余裕のあるカカシ先生。やっぱり私と先生は、子供と大人なんだ。その事実をまざまざと見せつけられる。
こんな女、いやまだ女ですらない、こんな子供、カカシ先生は興味ないんだろうな……。はぁ、失敗した。もっと早く生まれれば、もう少しカカシ先生へのチャンスはあったのかな……。

再び見るからに落ち込む私に一歩近付き、膝と腰を曲げ、カカシ先生は私に身長を合わせた。
その表情は、相変わらず余裕綽々の笑顔が浮かべられている。振られた私にはその笑顔が眩しすぎた。この笑顔を独占するチャンスがないのなら、目に焼き付けておこう、そう思った時だった。


「分かった。かなり期待して待ってるよ」


お前は、大人になったらもっと美人になりそうだしね。
そう付け足してから、カカシ先生は風のように軽やかに消えた。

何が起きたのか理解できない私の足は、そこに根が生えたように動かなくなってしまった。



続く……



初恋C end.

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