初恋B
ーー中忍試験推薦したから、みんな頑張れよ。
担当上忍の先生から受験票を受け取った。これに記入をして、試験会場に行けばいいと言う。
私は演習場にひとり残って受験票を見つめていた。下忍の自分がカカシ先生に近付く第一歩なのだから、中忍にならなければ。いや、そうじゃなくてもならなきゃいけないんだけど。
「お、ちゃんと受験票受け取ったんだな」
声がして振り返れば、カカシ先生が立っていた。心臓が飛び出るくらいに驚いたけど、忍らしくぐっとこらえた。
先生は、これから七班のみんなに受験票を渡しに行くらしい。
「あの、カカシ先生」
「ん?」
「私、絶対中忍になります」
「いい心掛けだね」
一歩、もう一歩カカシ先生に近付いた。
「あの、もし中忍になれたらお話があります」
「そう、もしかして悪い話?」
「た、多分、違うと思います」
どうやら自分はかなり思い詰めた顔をしていたらしい。
「ほら、可愛い顔が台無し。笑って笑って」
頬を両側からぐいっとカカシ先生の指で引き上げられた。ああ、だからこの人に私は弱い。
「俺、サクラ達の先生だから大っぴらには言わないけど、変わらず応援してるからね」
「あひがとうございます!」
だから、この人はどこまでもずるいんだ。
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中忍試験が終わり、本選にすら進めなかった私は中忍に勿論なれなかった。落ち込んでいる私のところに、音もなくカカシ先生がやってきて酷く驚いたのが5分前。
ひとしきり励ましてくれて、僅かに元気が出たところで先生があの時の話に触れる。
「でも、話してくれる?気になってたんだけど」
「いいえ!中忍になれなかったんですから、話すわけにはいきません」
「意地っ張りだね」
呆れたようなカカシ先生の顔が横目に見えて、激しい後悔に襲われた。素直に話をした方が、先生は可愛いと思ってくれたかもしれない。
なんて私は馬鹿なんだろう。もう少し、テクニックとか使えたら……子供の私がカカシ先生の恋人になろうって言うのが無謀なのかな。素直に想いを告げたほうが、先生は可愛い生徒だって思ってくれたのかもしれない。
「ま、そんなとこ俺は好きだよ」
「え?」
「次の試験も頑張りな」
「は、はい!次は絶対中忍になります!」
「大丈夫。サクラに聞いたら、頑張り屋さんだって言ってたしね」
「え?私のことを?」
うん、頑張れ。カカシ先生は、私の頭をポンポンと触れてから優しい笑みを浮かべてくれた。
やはりこの恋の熱は、何があっても簡単には冷めそうにない。
続く……
初恋B end.
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