初恋A
「えぇー!カカシ先生なの!?」
「しー!サクラちゃん、声大きい!」
任務帰り、互いの先生と解散した所でたまたま一緒になって女子会をしようとカフェに来た。
最初はこんな任務だっただの、マダムしじみがまた猫を逃しただの、仕事の話をしていたが、勿論、話題は恋愛になる訳で。
サクラちゃんは、最近サスケくんとこんな話をしたとか、こんな事をしたとかキラキラした目で話してくれた。
で、私には何かないの?と聞かれてカカシ先生が気になってると言った。それで、今こうなっている。
「えぇ、確かに先生は強いけど……遅刻魔でいかがわしい本読むような人よ?」
そんなの知っているでも、でも、何だか頭からカカシ先生のことが離れないの。初めて会った時に触れてくれた感触も、笑顔も、声も、気付いたら思い出して考えている。
「でも、会ったのはあの1回だけでしょ?」
「ううん、また会えたの」
2度目に会ったのは、自分の上忍先生に頼まれ事をされて、ひとりで受付所にいた時。カカシ先生が見つけて声を掛けてくれた。
「あ、君はサクラの友達だね」
「カ!カカシ先生!?」
まさか先生に会えるなんて思ってなかったから、完全に気を抜いていた。今朝、直せなかった寝癖を手でさり気なく隠した。
会えるなら、化粧もちゃんとしてこれば良かった……。
「カカシ先生は、これからサクラちゃん達と任務ですか?」
「ううん、単独任務」
「が、頑張って下さい!」
「うん、ありがとね」
カカシ先生は三代目様から受け取った依頼書に軽く目を通してから、三代目様に何かお話をしていた。きっと、今の私には想像もつかないくらいに難しい任務なんだろうなぁ。
私の先生も、私達が休みの時は高ランク任務をこなしているんだもん。上忍って里のエリートばかりなんだもんね。
「じゃ、君も頑張ってね」
「は、はい!」
通りがけに頭をポンとされて、再び体が硬直した。
「あ、そう言えば」
「なんです、か?」
「名前知らなかったね」
必死に絞り出して名前を言えば、カカシ先生はニッコリと笑ってくれた。
「わかった。覚えたよ」
カカシ先生の中に、1ミリでも良いから自分の存在が大きくなってくれたらいいな。そう願わずにはいられなかった。
「うーん、それは恋ね」
「そうかぁ」
アイスティーの中の氷をストローでクルクルと回す。こうやって何かをしなければ、頭の中がカカシ先生でいっぱいになってしまう。いや、何をしても、カカシ先生のことで頭がいっぱいなんだけど。
「応援するわよ、友達でしょう?」
「サクラちゃん、ありがとう」
クルクル回し過ぎたせいで、アイスティーの氷はほとんど溶けてしまった。
薄くなったアイスティーを飲みながら、この恋の熱は氷なんかでは冷めてくれないことを子供ながらに感じていた。
続く……
初恋A end.
[
back]