初恋@


私の初恋は、ずっと年上の男の人だった。 


私が初めてカカシ先生に会ったのは、ポカポカと陽射しが暖かく、でも、まだ少し薄着をするには寒い、春がやってくる前の頃だった。
その日は、任務が休みで友達のサクラちゃんと遊んでいた。新しく発売された化粧品を買って、次はアクセサリーを見に行こうと話していた。

「あ!カカシ先生だ」
「カカシ先生?」
「うん、私の先生」

サクラちゃんが名前を大声で呼びながら駆け寄ったのは、猫背でポケットに両手を入れたままゆっくりと歩く後ろ姿だった。サクラちゃんに呼ばれて、その後ろ姿はゆっくりと振り向いた。

「お、サクラか」
「先生も休みですか?」
「いや、これから任務だよ」 

サクラちゃんに向けられた目線が、ふっと私に向けられた。
その瞬間、背筋がピーンと伸びて体が固まる。 

「サクラの友達?」
「は、はい!サクラちゃんには、いつもお世話になってます!」 

指先までピーンと伸びた私の体は、きっとブリキの人形みたいでおかしいんだろう。カカシ先生は、クスクスと笑った。 

「こちらこそ、いつもサクラがありがとう」 

まるで子供をあやすように屈んだカカシ先生は、私の頭をヨシヨシと撫でた。恥ずかしくて顔から火が出るかと思った。 

「先生、それってセクハラです」
「えぇ?そうなの?ごめんね」
「い、いえ!全然そんなこと!」


慌てる私とは対照的に、カカシ先生は任務に遅れるからと落ち着いた様子で私達にじゃあね、と離れて行った。
サクラちゃんは、アッサリと行こっかとアクセサリーショップの方向へ向かう。

私は、段々と遠くなる後ろ姿から目を逸らせずにいた。

ふと、小さな後ろ姿が振り返って、私の姿を確認するとポケットから手を出して振ってくれた。突然のことに私はパニックになってしまって、頭を下げることしかできなかった。
カカシ先生の表情は分からなったけど、笑ってくれている、そんな気がした。 

「ね、早く行こう!」
「あ、ごめん!」 

サクラちゃんに呼ばれてから、もう一度だけカカシ先生の方に振り向けば、カカシ先生は『ごめんね』と言うように手を縦に下ろして再び歩き出した。そして、人混みに紛れてその後ろ姿は見えなくなった。 

あぁ、春は、本当にもうすぐそこまで来ている。

私はそう確信して、サクラちゃんの方へと走って行った。 




初恋@ end.

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