指切りげんまん


「今日はなんの日か知ってる?」
「うん!スーパーのお魚が特売日なんだよ!任務終わったら行かなきゃ!」
「え!?そうなの?」

って、そーいうことじゃなくて、とカカシは名前の前に立ちはだかる。名前は、カカシはお魚好きでしょ?と首を傾げた。

「うん、魚は好きだよ。でもね、もっと大事なことがさ……」

カカシが名前の肩に触れた瞬間、ふたりの間に熱風が吹き込んだ。風上を見れば、この里でいちばんむさ苦しい男が立っている。

「おーい!カカシ!名前!」
「あ!ガイ!」
「……ッチ」

カカシと名前の元に、ガイが駆け寄る。

「三代目の命で、俺も同行することになった!よろしくな!」
「わー!よろしくね!」
「…………」

名前とのツーマンセルだと思っていたのに。俺がこの日をいかに楽しみにしていたか!!三代目もそりゃないよ、と心の中で項垂れた。

「隊長は俺だから、勝手なことするなよ」
「おう!任せろ!」
「はーい!カカシ隊長!」

名前は可愛いのに、横の奴が邪魔だな。と思いながら、さっさと任務を終わらせようと心に誓った。

任務は順調に進み、あとは里に戻るだけとなった。

「あ、用事思い出した。ガイ、報告書よろしく記入済みだから」
「なに!?それなら俺も!」
「お前には、この大事な任務の報告書をライバルであるガイに託したいんだよ」
「それは大事なことだな!任せておけ!」

ダイナミックエントリーをかまさんばかりのスピードでガイは駆け抜けて行った。

「速いね」
「そうだな、名前行くよ」
「ん?うん!」

カカシは名前を連れて、火影岩の上にある見晴らしの良い木の上に登った。

「わぁ、綺麗」
「名前、任務前に今日はなんの日か聞いたでしょ?」
「うん、特売の日だよね」
「う……うん、だからね、今日は名前の誕生日でしょ?」
「…………は!」

名前は、顔を真っ赤にしてカカシを見上げた。

「わ、忘れてました……」
「嘘でしょ……」

名前が本当に忘れてたの!と全力で否定するものだから、そんなにムキにならなくても、と思った。

「とにかくさ、おめでとう」
「ありがとう!とっても嬉しい」

カカシは、ポーチから小さな箱を取り出し名前に差し出す。

「気に入ってくれると良いんだけど」
「カカシがくれたんだもの!気に入る!気に入る!」

嬉しそうに箱を開ける名前の笑顔に、カカシは良かったと安堵した。

「カカシ、本当にありがとう!」

カカシがプレゼントしたのは、髪を留めるためのゴムだった。名前は早速髪を結いて、カカシに見せる。名前の髪をヒラリとさせながら、髪留めはキラリと輝いた。

「どうかな?最近、なくしたばかりだから凄く助かる」

勿論、そんな事はリサーチ済みでカカシはそれを選んだのだが。名前は知る由もない。

「うん、可愛い。似合うよ」
「やったー!次はカカシの誕生日にお返ししないとね」
「俺はいいよ。おっさんだし」

本当は凄く嬉しかったが、カカシはついつい照れ隠しをしてしまった。

「だーめ、カカシの誕生日は覚えてるんだから」
「自分のは忘れるのに?」
「さ、最近忙しかっただけなの!!」
「はいはい」

もー、違うんだってばー!と唇を尖らす名前を宥めながら、カカシは小指を差し出した。

「じゃあ、約束しよう」
「……うん!カカシの誕生日も一緒にお祝いね、指切りげんまん嘘ついたら針千本のーます!指切った!」

名前は絡めていた小指を離そうとしたが、カカシが離してくれない。カカシは身を屈めて、名前の耳元に自分の唇を寄せた。

「それから、俺と名前の2人きりでね」

指切った、そう言ってカカシはやっと小指を離した。

離れた小指がジンジンと熱く感じたのは、きっとカカシが強く絡めて来たからだ。名前はそう結論付けて、カカシの約束に大きく頷いた。



指切りげんまん end.

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