とある夏島へと上陸したのは、3日前のことだった。
この島はリゾート地のようで、近辺の島からも観光客が訪れる。浜辺には人が溢れており、人が少ない場所を選んでサニー号のイカリを下ろした。
1日目は島の様子を探索し、2日目は浜辺でバーベキューし、3日目は各自好きなことをしようということになった。
「サンジくん、トロピカルジュースお願いできる?」
「喜んでー!」
ナミとロビンとなまえの女性組は浜辺にパラソルを立て、のんびりとした時間を過ごすようだ。
サンジはナミの言葉で、3人分のジュースを作りに離れたサニー号へと走って戻っていく。
ウソップとフランキーは能力者たち用に浮き輪を膨らませており、ブルックは船番で、ルフィとチョッパーは海に飛び込みゾロに救出されていた。
「ロビン、何読んでるの?」
「初日に買った本よ。この島の歴史」
なまえの問いに、セクシーな水着姿のロビンは微笑んだ。
「ほんと好きだね!」
「地図もあるからあとで渡すわね、ナミ」
「え!助かる!ありがとう」
そのままロビンは読書を続ける。
ナミはぼーっと海を眺めながら、なまえに話しかけるために口を開いた。
「そう言えば、日焼け止め塗った?」
「たっぷり塗ったよ」
「なーんだ、ルフィに塗らせようと思ったのに」
「え!?何を求めてるの!?」
「あんた達がイチャイチャしてるとこー」
それって見たいの?となまえは不思議に思いつつ、ナミがいつも楽しんで恋バナをしていることを思い出す。クルーのイチャイチャを見て楽しいものなのだろうか。生憎船内で色恋沙汰はなまえとルフィだけなので、感じることはできない。
「意外とルフィもベタベタしないわよね、つまんない」
「みんながいる前では私も嫌だよ」
ナミは頬を膨らませて拗ねた表情を見せる。
色んな島に上陸する度に、2人のデートの日は作っているし、船内で2人がコソッと会っているのも知っているが、みんなの前だといつも通りすぎて本当に付き合ってるのかと疑うほどだ。
「でも、なまえの水着見て顔を赤くしてたのは知ってるのよ!」
「もうっ、恥ずかしいから言わないでよ!」
その時は頬が緩みまくり、ナミは抑えることができなかった。好きな2人の仲が良いのはナミにとって幸せなことだ。もっと見たいと思ってしまう。
「ルフィと泳いできてもいいのよ?」
「いいよ、ナミと話してたいし」
「上手いこと言って!明日デートだからでしょー」
「それもある!」
ナミとなまえは2人で顔を見合わせて、吹き出した。こうやって女同士で話すのも至福の時間だ。
そこで、トロピカルジュース3人分を手に持ったサンジが帰ってきた。
「おっ待たせしましたー!!」
目にハートを浮かべたサンジは3人にジュースを手渡し、その美貌に見惚れてしまう。この浜辺で一番輝いていると断言できるほどだ。
「最高だーーーー!リゾート!!」
「うるせェ!まゆげ!」
「ああん?マリモは黙ってろ!」
いつも通りのサンジとゾロの喧嘩だが、ナミは止めようとしなかった。なぜなら、目の前の光景に夢中だったからだ。
ナミの目線の先、そこには船長の姿があり、チラチラとなまえを見ているのがわかる。頬がゆっくりと緩んでいき、ナミはトロピカルジュースどころではない。
「ナミ、顔に出てるわよ?」
「だ、だってロビン!!!」
興奮気味のナミにロビンは小さな笑い声をあげた。
なまえは気づいていないので、ジュースを楽しんでいる。
ナミは気づいていた。パラソルを立てた時から周りに少しずつ集まっている男たちの姿に。美女3人が集まっていれば、注目を浴びないわけがない。サンジが来た瞬間に目線を逸らしてはいたが、チラリチラリと盗み見ている。
きっと、ルフィはそれが気になるのだろう。ナミは想像するだけで胸が高鳴った。
「はぁーー、こういうのを待ってたのよ私!ときめき!!」
「ナミどうしたの?」
「夏って素敵ね!」
きゅんきゅん、と高鳴る胸はナミに幸福感をもたらすようだ。そして、ナミの期待通り。サンジとゾロがいなくなった今、チャンスだとばかりに数人の男組が近づいてきた。
「姉ちゃんたち、見かけない顔だけど観光?」
「そうよー、ここ素敵ね」
いつもならすぐに追い払うナミも今日は乗り気のようだ。新しい水着も着て、気分がいい。
「おれ達と遊ばない?ビーチバレーとか」
「へぇ、いいわね。しようかな」
「お!いいね!名前は!?可愛すぎてビビった!」
5人の男に囲まれ、ナミは上機嫌で対応しロビンは本に視線を移したまま、なまえは困惑した表情を浮かべていた。どうしてこんなに乗り気なんだろうとナミに対して疑問さえ浮かぶ。
そこで、タイミングよくルフィの手がなまえの手首を掴んだのが見え、ナミは小さく指を鳴らす。
「なんだお前ら」
「ああ?ナミさん達に何の用だ」
ルフィの後ろからサンジも走ってきているが、ナミの目には入っていない。
男達はルフィとサンジの強さを知るはずもなく、2人を睨みつけていた。
「おれ達が先だ、てめェらは下がってろ」
男の1人がルフィの肩を強く押した。が、ルフィは微動だにせずサンジが右足をあげ軽く蹴る。すると、男は砂の上を転がっていった。
一瞬の出来事に、男の仲間は目を見開く。
「おれの女に手出すな」
ルフィの睨みで、数人腰が抜けてしまいその場に倒れる。まさか覇王色の覇気を使ったのだろうか、ナミはニヤけが止まらない。
サンジが1歩踏み出した時点で、男達は格好悪く走って逃げてしまった。すぐにサンジの表情は柔らかくなる。
「ナミさん、ロビンちゃん、なまえちゃん、大丈夫だった!?何もされてねェか?」
「大丈夫よ!」
「ナミ、わざとやったろ」
ナミはルフィの言葉にビクッと肩が跳ねた。不機嫌そうにナミを見るルフィは気づいていたらしい。
「だって見たかったんだもーん!」
ナミがわざと可愛こぶるので、サンジはまんまとやられその場に鼻血を出して倒れてしまった。
「なんかおかしいと思った!」
「やめろよ、ナミ!すっげェ妬いた」
なまえの顔がずっと赤いのは、おれの女発言と妬いたという言葉。サラッと言っているがストレートすぎる言葉になまえの胸はドキドキしていた。
「でももう満足!キュンキュンしたー!」
「なんだそれ……あ、じゃあなまえと泳いでくる」
「え!?ルフィ!?」
ルフィはなまえの手首を引っ張り、海の方へと歩いていく。ナミはその光景を驚いた顔で見据えていた。
「え!うそ!それも見れるの!?」
「ふふっ、珍しいわね」
「あの野郎、クソ羨ましい…」
サンジ以外は微笑ましい表情でルフィとなまえの背中を見送った。
冷たい感触に、なまえはゆっくりとした動きへと変えた。暑いとは言えいきなり海に足を付けるのは早かったようだ。足首から順番に海へと入り、体を慣らしていく。
ルフィは先に浮き輪で浮かんでいて、なまえの手を取って引き寄せる。
「それ、肌出しすぎじゃねェか?」
「水着はこういうものでしょ?」
「かわいいけどよ、すっげェ見られててムカつく」
ナンパされていたところを思い出し、またルフィは口を尖らせた。好きな人のビキニ姿は破壊的だが、その分見られたくないと感じてしまう。
「海に入ってたら見えねェな!」
「あ!だから連れてきたの?」
「もう見せたくねェからな、おれだけが楽しむ!」
そう言って、ルフィはなまえの腰に手を沿わして、すべすべの感触を楽しむ。
「ちょ、ルフィ、」
「エロいな、これ」
ほぼ下着じゃん、とルフィは思う。尚更もう他の男には見せられないと思った。
顔を赤くして、なまえはルフィの浮き輪に捕まることしかできない。
「キスしてェけど、ナミたち見てるなァ」
「じゃあダメだよ!恥ずかしいし」
「はぁぁ。明日いっぱいするからな」
「うん、いっぱいしてね」
可愛い顔してそんなことを言うから、ルフィは自分を止めるのに必死だった。今すぐその唇を塞いでしまいたい衝動に駆られる。
なんとか抑え、ルフィは麦わら帽子をなまえの頭に乗せた。日差しで眩しそうに目を細めていたからだ。
「ありがとう、涼しい」
「似合うな、麦わら帽子」
「そうかな?麦わらのなまえになれる?」
「ししっ、シャンクスに怒られる」
お互い目を合わせ、笑い合う。このままナミの思惑通りになるのが癪なので、ルフィは気持ちをグッと堪えてなまえとの時間を楽しんだ。
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