ーーーーー何かが落ちる音がした
 
 

次の日。教室に入る前にトイレに向かった。
ゾロとはあの後、わざと他愛もない会話をして帰った。少しスッキリとした気持ちで学校に来ることができたのはゾロのおかげだ。

「ねェ、アキちゃんうざくない?」

聞こえてきた声のせいで、トイレの個室から出るに出れなくなり、立ち尽くす。
あの時の記憶が一気に頭の中に流れ込んだきた。フラッシュバックしていく出来事に吐き気がして、個室でうずくまる。信じようと決めた次の日にこんなことになるなんて。

「昨日ゾロと帰ってたらしいよ。」

「麦わら部に入ったんでしょ?」

「みんなルフィゾロサンジ狙ってんのに。」

「どんな手、使ったんだろうね。」

三人がモテるのは知っていたけど、妬まれるとは思っていなかった。やっぱりこういう「陰口」はあの時から慣れることがない。胸は苦しいし泣きそうになる。
チャイムが鳴って、女の子たちが戻った後トイレから出る。一限目が始まってしまったので、私はノロノロと歩き出した。

辿り着いたのはいつも昼ご飯を食べている屋上だった。扉を開けると、涼しい風が頬を撫でた。もう本格的に秋になろうとしている。
なんとなく景色を眺めた。海が見えて、太陽の光を反射してキラキラと輝いている。夏になったら泳ぎに行きたいな。冬の海もいいかもな、なんて考えてさっきのことを忘れようとするが無理だ。
ゾロは頼れ、と言った。でも巻き込みたくないという思いが強い。それは、前の学校で大切な人を巻き込んでしまったのが原因だ。

『アキ休み?』
『どうした?』

ナミちゃんとゾロからメッセージが入る。2人にサボってしまったことを伝えてから、私は段差に腰掛けた。そのままボーッと空を眺めていると、涙が溢れていた。
いじめが始まったわけでもないのに。たったあれだけの陰口で、私の心は深く抉られる。慣れることのない悲しみと不安。人に悪口を言われたり無視されたり、やっぱり慣れることなんてないだろう。

「はぁぁぁぁ。」

大きくため息をついて、涙を拭う。ゾロの言う通り彼らに相談すべきだろうか。私は、変われるのかな。
ルフィくんの顔が出てきては消えて、私の胸を高鳴らせる。気持ちがぐちゃぐちゃで、せっかく拭ったはずの涙がまた溢れ出した。
私は静かに、泣くことしかできなかった。



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