ーーーーー何かが落ちる音がした
 
 
歩きながら考え込んでいると、ゾロが突然道で立ち止まる。
靴箱までだと思ったが、帰る方向も一緒だったので横に並んで歩いていた。

「なんか悩んでんのか?」

「え……なにもないよ。」

「そうか。何も無ェ顔ではないけどな。」

嘘はすぐにバレていて、ゾロの優しさに、胸が少し暖かくなった気がする。話してもいいだろうか。私も立ち止まって、ゾロの方を振り返る。

「ルフィくんを、好きになっちゃった…かも」

「へー」

ゾロの返答に私は固まってしまった。思ったより反応が薄かったからだ。

「きゅ、急にごめんね!でも、告白するつもりはないの!」

ゾロは静かに聞いていた。その沈黙が耐えられず、私は言葉を続ける。

「私、もう誰も失いたくないんだ…大事な人を作るのが怖いの」

「アキはおれに何を抱えてるか聞いてほしいのか?それともルフィはやめとけって言われてェのか?おれには言い訳しなくていい。自分がどうしたいかハッキリしろ」

ゾロの言葉に、私は言葉を失ってしまった。ゾロは怒っているのではない、ただハッキリしない私が面倒くさいだけだろう。私は最低な考えをしていた。ルフィくんのことが好きだと伝えておきながら、告白はしないって相談でもなんでも無い。慰めろと言っているようなものだ。なぜこういう経緯になったのか話さないと意味がない。
少し自分を落ち着かせる。あの体験を思い出すだけで胸が苦しくなるが、逃げてばかりではいけない。唇はずっと震えているし、ゾロに言うのも怖い。でも、ルフィくんを好きになったことを話したからには、きちんと伝えなければならない。

「私…前の学校でいじめられてた。」

自分を抱きしめるように、腕を組む。怖くなって、その場にしゃがみ込んだ。

「何も信じられなくなって、死んでしまいたいって思った時に助けてくれた人がいたの。でも、その唯一大切だった人が私のせいで傷つけられた。私が大切にすればするほど、その人が傷つけられるのが耐えられない。だから、人を好きになるのが怖い。ルフィくんだけじゃなくて、麦わら部のみんなが大切で、壊したくない。麦わら部に入るのをずっと躊躇ってたのはそのせいなの!でも、部活に入る前から私はみんかが大切になってて……離れたくなかった!!だから、失いたくないなんて言いながら結局は私はみんなと一緒にいる方を選んだの。」

自分がなにを言ってるのかもわからなくなって、涙がポロポロと落ちた。思ったことを全て口に出して、そのまま膝に顔を埋める。
そして、気づいた時にはゾロに抱きしめられていた。私は声をあげて泣いていて、ゾロは落ち着くまでずっと背中を撫でてくれた。

「失いたくねェのに、おれ達を選んだんだろ?じゃあおれ達を、ルフィを信じろ。」

「うぅっ、んぐ、」

「アキがルフィを好きになったからって、もう誰もお前をいじめたりしねェよ。もし、いじめが起きたとしても、その、なんだ…おれはダチだろ。頼ればいい」

急に恥ずかしくなったのか、ゾロは小声になっていた。
でも、そのゾロの言葉が私の傷ついた心に染み込んでいって、胸の奥から暖かくなっていく気がした。話してよかったと、心の底から思った。
もちろん、もう大切な人たちは失いたくない。だから遠ざけるは間違ってて、信じないと始まらないのだとゾロとルフィくんから教わった。私は、ルフィくん達を信じたい。



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