ーーーーー何かが落ちる音がした
 
 
「麦わら部に入りました!」

部活の時間になり、部室で私は挨拶した。
部屋の中には机が7つと黒板、ロッカーも7つで、冷蔵庫にキッチン、ソファまであった。部室とは思えない快適な空間。秘密基地みたいでワクワクした。

「なんか…学校じゃないみたいだね。」

「ゆったりしていいぞ!」

ルフィくんは家にいるかのように、ソファに寝転んでくつろいでいる。私は椅子に座った。すぐにサンジくんが紅茶を持ってきてくれる。

麦わら部には依頼が結構来ているみたいで、本格的な部活なんだと改めて思った。部室の前に箱が設置されており、そこに相談事や聞いてほしい事、解決したい事を書いていれるだけらしい。

部活のことを教えてもらい、ジュースやケーキを食べて色んな話をした。今までの活動のことや、この学校のこと。私の前の学校の話はなぜか誰にも聞かれなかった。

「そろそろ帰るわよ、ルフィ」

「おう、わかった」

いつの間にか、下校時刻が迫っていた。この時間を過ぎると、先生達が見回りに来て帰らされるらしい。

「じゃあ、またな!」

扉から出ようとするルフィくんとバチッと目が合って、すぐにそらしてしまった。無視みたいになっちゃったな。でも、もう一度ルフィくんを見るとこができなかった。

「私もそろそろ帰ろうかな。」

「おれも。」

私とゾロくん以外、電車組のためもうちょっと残るみたい。ということは、当然ゾロくんと下駄箱に向かうことになる。

「ゾロくん」

「ゾロ。」

「え?」

「くんとか気持ち悪いから付けんな」

ごめんなさい、と謝って沈黙の中を歩く。私嫌われてるのかな、と心配になって、でも聞くことなんかできない。もともと口数が少ない彼と2人で話すことなんて今までなかった。

「わりィな。お前のこと嫌いなわけじゃねェよ」

考えていることがわかったのか、少し申し訳なさそうな顔をした後、ゾロはまた前を向いた。

「友達に、なって下さい!」

そう言うと、少し驚いた顔をしてゾロは笑い出した。声に出して笑うところ、初めて見た。その後、頭をポンポンッと優しく叩かれる。

「もう友達だろ。よろしくな、アキ。」

本当はすごく友達想いで、いい人なんだと感じた。友達を、仲間を守るために新しく入った私を警戒していたのかも。でも、仲間として認めてくれた。嬉しくて、ニヤけてしまう。

「なにニヤけてんだ?」

「ありがとう!」

素直にお礼を言うと、照れたのか、顔をそらすから声を出して笑ってしまう。そうしたらゾロが怒るから、なんだか可愛くみえた。

「アキ、とゾロ」

「あ、ルフィくん。」

「お前らも帰るのか?」

「うん。」

変に緊張して、うまく話せない。さっき目線をそらしてしまったからだろう。ナミちゃんを待っているのか、壁に寄りかかるルフィくんは絵になる。

「そうか…あのな…」

ルフィくんの黒い瞳にじっと見つめられて、戸惑う。胸がドキドキうるさくて、体が熱い。見つめられただけでこれじゃあ、先が思いやられる。
ぐっと気持ちを押し込め、なんとかその瞳を見つめ返した。

「ルフィ!ごめん!ノート合った!」

「おー、見つかったのか」

ナミちゃんが走って戻ってきたので、ルフィくんの言葉の続きを聞くことはできなかった。少し髪が乱れているナミちゃんは本当に綺麗で、女の私でも見惚れるほど。

「あれ、アキとゾロ一緒に帰るのね!」

「たまたまな」

「じゃあまた明日ねー!」

「ナミちゃん、ルフィくんまた明日」

2人の後ろ姿を見つめていると、胸が締め付けられて苦しかった。私のこの気持ちは日に日に増えている気がする。まだ一週間しか経ってないのに。なぜこんなにも、ルフィくんに惹かれるんだろう。そして、どうして泣きそうになるんだろう。
ゾロはもう靴を履き替えていたので、私も慌てて自分の靴箱を開けた。



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