「色よりさ、とりあえず素材から決めねぇ?その方がもっと効率よく絞れる気ィするわ」
「なるほど・・・!」
「可愛さ重視で選ぶのもありではあるけど、大事なのは名前さんがどんな部屋で生活したいかだろ?」

案の定、手芸屋さんにいってもうんうん首を捻りながら悩みまくる私に、どう選ぶべきか的確なアドバイスをくれる三ツ谷くんの声はどこか生き生きとして弾んでいた。本当に裁縫やデザインが好きなんだろうな。あれこれと布地を数種類触り比べながら、私の好みの範疇で激選してくれるので、言わずもがなデザイナーへの憧れがひしひしと伝わってくる。頼もしい限りだ。三ツ谷くんの有難いアドバイスを参考に私もどんなカーテンがいいかを自分の部屋をイメージしながら想像を膨らませることにした。

「んー、リネンも可愛くて悩んだけど、やっぱ朝弱いから適度に遮光性はあったほうがいいかな。休みの日は遅くまで寝たいし。」
「だよな、分かる。」
「となったらやっぱベルベットのグリーンが素敵だな思うんだけど、この色だと深すぎて部屋が重たくなる気もして悩むんだよねぇ」
「そーか?俺の見立てでは、結構布地に光沢があるから太陽光だと店内で見るより色の印象は和らぐ気ィするけどな。もしそれでもどん張っぽくなるようならフリルをつけるのもアリ。」

自分のセンスを全く信用出来ずに第一候補を持って恐る恐る反応を伺い見れば、いいんじゃね?とふっと目を細めて笑う三ツ谷くん。こんな思春期真っ只中の男の子から出てきたフリルというワードに正直キュンとしたが、なんせ手芸部の部長様なので「俺、結構得意よ?」と少し得意げにいう三ツ谷くんには全くといっていいほど照れがない。

「じゃあこれにする!」
「オッケ。ほら、重いだろ?貸して」

お会計に行こうと私がよっこらしょっと布をかかえ直すとそれを見た三ツ谷くんはなかなかの重量がある布の筒を私の腕の中から奪って軽々と肩に担いだ。あんまりスムーズな流れだったので呆然としていれば、三ツ谷くんは渡していた採寸のメモを見ながら、慣れた様子で店員さんに裁断を頼みにいく。慌てて駆け足でついていくと『かしこまりました』と私たちを見て意味深に微笑む店員さんは、指示された長さに合わせてすーぅと布地にハサミを通した。我ながら単純なことにこれがもうすぐ私の部屋のカーテンになるんだと思うと、心臓がドキドキと脈打つ。楽しみすぎる!

「ありがと。お陰さまでいい買い物できたよ」
「どーいたしまして。」

お会計が終わってすぐに列から外れた場所で待っててくれた三ツ谷くんに駆け寄りお礼を言えば、三ツ谷くんはにかっと白い歯を見せて爽やかに笑う。
・・・どうしたんだろう。それから店を出ても布の入った紙袋を持とうとしてくれる三ツ谷くんは、どんなに私が「自分で持ちたい!」と駄々をこねても折れる気配はなく「ダーーーメッ」と頑なに拒否をする。結局半ば追い剥ぎのように手の中の袋を剥ぎとられ、私にはそんな事を平気でやってのける彼がそんじょそこらにいる中学生男子と同じとは到底思えなくなっていた。あまりに紳士すぎる。大人になってもここまで平然とレディファーストを徹底できる男の人はなかなかいない気がする。

それでも三ツ谷くんを甘やかしたいという私のお節介な情熱は消えることはなく、むしろ燃え上がる一方だった。

「スタバよろうよ。休憩したい!」

お礼にかこつけて奢ろ!!と意気揚々とお店を指さすと、

「休憩すんのは賛成だけど、言っとくけど自分の分は自分で払うからな。」

私のそんな浅はかな思考は全て目の前の彼に読まれていた。

ルナマナちゃんもいないというのにいつも以上にしっかりしている三ツ谷くんの隙のなさに不満を覚えれば、「・・・・・・・・名前さんがどういうつもりか知らないけど、これって世間一般ではデートだろ?カッコつけさせてよ」と横を歩く三ツ谷くんがその場で足を止めて此方を覗く。

で、でーと???

普通に買い物に付き合ってもらっていると思っていたので解釈の違いにフリーズしていれば、困り顔で苦笑いする三ツ谷くんは「やっぱ分かってないなら尚更奢るのはナシな」と呆れ果てる。

三ツ谷くんがどんなつもりでこれをデート呼ばわりするのか分からないけど、少しだけ距離を詰めてきた三ツ谷くんの腕が肩に軽く触れたのをきっかけに顔全体が異様に熱を持って汗ばんでいく気がした。
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