不動産の紹介でこの部屋を内見した時は、新しいし、広いし、予算内だし、角部屋ラッキーってことにしか頭になくて全く気づかなかったけれど、容赦なく差し込む西日は盲点だった。取り急ぎ通販で買ったカーテンは、安さと最低限陽を遮るのが取り柄なだけで、実物を見たら売れ残る事間違いなしの皺だらけで全く可愛くない残念な品だった。所謂画像はイメージですってやつだ。その上サイズも適当に測って注文したため、丈すら微妙に足りてないとくれば、私から掃除のやる気を全て奪うのは全てコイツが原因だと言える。風水なんか全く知らないし、興味もないけど、何か不運なことがあるたびに私はコイツが私から運気を奪っているんだと確信していた。

しかし、そんな冴えない日々ももうすぐ終わりだ。

手芸部部長、そしてデザイナーの卵の三ツ谷くんがカーテン作りを快く了承してくれたので、ここ最近、私の頭の中は朝から晩までカーテンを新調することで埋め尽くされている。今流行りのくすみカラーもいいけど、シックに部屋が引き締まりそうな深みのある色も捨てがたい。ネットで色んなカーテンを検索するけど、見れば見るほど逆に選択肢が増えて『参考までにどんな感じがいいとかある?』って三ツ谷くんのメールになかなか答えられずにいた。

『正直、15種類くらい私の中で候補がある』
『候補がないっていってるよーなもんだな』

確かに私が優柔不断すぎるのが悪いんだけど、なかなか手厳しい反応だ。それでも決めかねてずらりとメモ帳に書き上げた15個の候補をひたすら睨み続ける私だったが、三ツ谷くんは全く返って来ない返信に切りがないと判断したのか『じゃあ今度の日曜、名前さんが暇なら俺と布地見に行くってのは?デザインに行き詰まった時は俺もそうしてるし』と私にとっては嬉しすぎる提案が返ってきた。なんて親切で誠実な男の子だろう。三ツ谷様々だ。

「お待たせ!!・・・・・あれ?マナちゃんとルナちゃんは??」

待ち合わせ場所にはシンプルながらモード系でカッチリ決めたお洒落な三ツ谷くんだけだったので、キョロキョロと目線を下げて辺りを見渡す。てっきりみんなでお出かけと思いこんでいたので、ある程度私もTシャツとジーパンという動きやすい服装で気構えていれば、とんだ肩透かしにあう。三ツ谷くんはそんな私を見て困ったように眉を下げた。

「あ、ワリィ。今日は俺だけだけど、アイツらも呼んだ方がよかった?」
「え!いや全然そんな事はないけど!こんな頻度で友達に預けてていいのかなって思って」
「今日は母さんのお守りだから大丈夫。久々の休みだからか、アイツ達、朝からベッタリでさ」
「あー、そうなんだ。なんかせっかくの家族水入らずなのにごめんね、三ツ谷くん。」
「・・・・・いやいや。たまに忘れてる気ィするけど、俺、もう15だからな。母さんにベッタリって歳でもねぇよ。」

それでも私からしたらまだ15なんですけど。

微妙に子供扱いに拗ねた様子なので本音の代わりにハハハっと適当に笑っておいた。雑な誤魔化し方をされた三ツ谷くんは「ったく笑って誤魔化すなっての」って全く納得してなさそうだけど、だって私が15歳だった時なんてもう遠い記憶なんだから仕方ないよね。15歳なんて私の薄っぺらい人生経験から言わせてもらってもまだまだこれからである。

「じゃあ・・・・・、まあ行くか」
「お願いします」

とりあえず困り果てる私にこれ以上突っ込むほど三ツ谷くんが子供でないことだけは知ってるから。

少し前を歩く三ツ谷くんの背中に私はこっそりと言い訳する。それで今日のところは勘弁してね。
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