「でね、でね。まま!!」
「名前ちゃんがね!」

いつもより少し早めに帰ってきた母さんに早速今日の出来事を報告するルナとマナ。アイスが食べれたことや玩具屋で遊んでもらったことも相当嬉しかったらしいが、一番嬉しかったのは、俺とはぐれて2人どうしようかと途方に暮れてる時に優しく声をかけてくれたことらしい。今母親に報告していることなら、名前さんと別れた後で何度も聞かされた。

名前さんだけが迷子の二人に優しく声をかけてくれて、ハンカチまで貸してくれて、その上励ましながら一緒にお兄ちゃんを探してくれたんだと。

名前さんに保護してもらった妹達を発見した時からやたら懐いてると思っていたけど、まあ実際話してみると俺でも懐く理由はわかる気がした。

正直名前さんにそれほど大人っぽい印象はなかったんだけど、それでも年の功というか、言わずもがなアレコレと気を回してくれて、その一日はいつもより妹達の世話を焼くのが楽だった。そもそも妹達を見つけてくれただけで頭が上がらないつーのに、その上切れかけていた手芸用品も補充できたし、実際妹達より俺の方が身に沁みてその恩恵を感じたかもしれない。何よりお前のためにやってやってるって感じが全くないのがいい。少しでもそういう台詞があったら俺は断固としてアイスを奢ってもらわなかったと思う。

『美味しい思いしてもいいと思うよ』

今思えば妹達が生まれてからこんなに細かく気を使われたことはなかった気がする。

母さんはルナとマナが生まれてから息をつく暇もないほど仕事と育児でかなり忙しくしてたし、そもそも日頃から"しっかり者"とよく称される事の多い俺は、普段なら妹や部活の後輩、同世代のダチ、いっそ属するグループの年上連中相手でも満遍なく世話を焼くことが多い。それを全く苦しく思わなかったといえば、昔「なんで俺だけ」って駄々こねてガキながらに抗ったこともあるので嘘になるけど、だからって人の好意にされっぱなしになって甘えるのが性に合わないのは自分が一番よく知っている。

・・・・・・それでも、だ。

去り際名前さんに言われた言葉を思い出すと不思議と胸が軽くなるのはなんでだろう。

『自分ってこんなもんだって決めてしまうより、甘えたり、甘えられたり、いろんな自分でいられる場所を見つけられる方が人生豊かだなって最近よく思うんだよ』

それは、ぽつり、と独り言のようにも聞こえたけど、優しく微笑む目線は間違いなく俺を捉えていた。気のせいじゃない。この人は本気で俺を心配して、俺のために、そう言ってる。
いい歳してこんな風に案じられたことへの気恥ずかしさと同時に、もっとその視線が欲しいと思った。純粋に自分のことを考えて気を遣ってもらえるのが、こんなに心地いい事だとは知らなかった。

名前さんは超がつくお節介であり、なかなかの甘やかし上手だと思う。

ルナマナを相手にする名前さんを見ながら、こんな姉ちゃんが上にいたら、俺も今よりもっと自由に生きられるのもなって漠然とそう思った。

ま、昨日行ったショッピングモールは家から近いわけではないし、もう会うこともねぇだろうけど。

「かし・・・・・隆、ねぇ聞いてる?」
「ん、何???」
「だから連絡先知ってるならそのお姉さんの所にお礼持っていってくれない?アンタもお世話になったんでしょ??」
「ルナも会いたいー!」
「マナもついてくー!!」


・・・・・は?
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