多くの家族連れが行き交う日曜の大型ショッピングモールで天使みたいなお顔の女の子が二人、街の真ん中で立ちすくんで途方にくれていた。あたりを見渡しても近くに親がいる様子はないし、どう見ても迷子である事は明らかだ。

「あらー迷子かしらね??」
「まだちっさいのに可哀想ー、お母さん近くにいるのかな?」

人通りも多いし、中には小さな女の子達を気にかける大人もいたことにはいた。だけど、結局その誰もが悩んだ末に『それほど泣いてないしまあ大丈夫だろう』『その内誰かが声をかけるだろう』『親が近くにいるだろう』と都合よく解釈して、いそいそと人の流れに乗って去ってしまう。

薄情だなとも思うが、正直分からないでもない。

この大型商業施設の客層は大半が小さな子ども連れの家族ばかりだ。平和な日本のよくある光景といってしまえばそれもそうだから。私だって誰かと待ち合わせしてたり、この後何か用事があれば、『優しい人、誰か助けてあげて』と心の中で謝りながら去ったはずだ。

そんな中、不憫にも人混みに二人取り残された姉妹は、大きなお目々に涙を浮かべて、私達にはお互いしかいないんだと言わんばかりにがっしりと手を繋いでいた。いっそのこと年相応に泣き喚いて『ママー!』と叫んでいれば、流石にお店の人か、もしくは先程声をかけるべきか悩んでた内の誰かが必ず助けてくれたはず。だけどそんなことなど知る由もない小さな二人は子どもなりに立派な矜持を持ち合わせているようだった。不安な気持ちを押し殺して溢れる涙を寸前のところでぐっと耐える。

その姿があまりに健気で、流石に心打たれた。

「ねぇ、どうしたの?大丈夫??」

見ていられなくなった私は、しゃがみ込んで二人に声をかけていた。

しばしの沈黙の後、パチクリと瞬きしていた二人の瞳がぐらりぐらりと揺れて、大粒の涙がぼろぼろと二人の頬を伝って落ちていく。まだ3、4歳と思われる妹ちゃんに至っては、う゛ぅと唸りながらしゃくりをあげだしたものだから物凄く焦った。

「わッ!大丈夫なわけないね!ごめんね。怖がらせたね」

慌てて鞄の中から二人に差し出すハンカチをガサゴソと探す。泣いちゃった!どうしよう……!内心パニックに陥りながらあたふたしていれば、そんな私の様子を見かねたのか、

「ありがと……。ルナ、全然怖くないよ……」

むしろ私に気を遣って素直にハンカチを受け取ってくれたお姉ちゃん。そして渡したハンカチを自分の目元をハンカチでぎゅっぎゅっと押さえた後、それを妹ちゃんの手に押し付けた。

「マナもぜんぜん怖くない……」

ぎゅっぎゅっ。
お姉ちゃんのルナちゃんの真似をして涙を拭うマナちゃんに思わず顔がだらしなく破綻する。

可愛い……ッッ!!

某『ちびっ子オツカイ番組』でも見ている気分になって、全力で二人の頭を撫でたい衝動に駆られたけど、保護者不在の中、こんな小さな子にベタベタ触れるのもこのご時世ではまずいかなと寸前の所で手を引っ込める。

「お母さんとはぐれちゃったの?」
「「お兄ちゃん。」」
「あ、お兄ちゃんときたの?3人で??」

こくりこくり

質問すると息ぴったりに二人は上下に頷いた。てっきりお母さんやお父さん同伴と思い込んでいたので、お兄ちゃん引率なのは予想外だった。ルナマナちゃんを迷子センターに預けようと考えていたが、一緒にきたのがお兄ちゃんなら呼び出しよりこっちから見つけてあげたほうがいいような気がする。お兄ちゃんだって迷子みたいなもんだろうし……。うん、そうしよう。

「お兄ちゃんのお名前は?」
「たかしだよ。」
「よし、じゃあタカシお兄ちゃん一緒に探そっか。」

私の提案に分かりやすく表情を明るくした姉妹が顔を見合わせる。助けてくれる大人に出会えて、ようやく安心出来たのか、すっかり涙は引っ込んだようだ。よかった。

それから2人は手慣れたようにすすすっと私の両側に立った。ふわふわで、あったかくて、紅葉のように小さなお手手に両手をぎゅっと握られる。不意打ちに驚いてみぎひだりして2人を見るとキュートすぎる笑顔がニッコリとこちらを見上げていた。

うっ、ハートまで握られた気分……。

「ありがとー!うれしい!!」
「お姉ちゃんのおなまえはなんて言うの?」
「苗字 名前です。よろしくね。ルナちゃん。マナちゃん。」
「「よろしくね、名前お姉ちゃん!!」」

ズキュン。
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