「はい。ルナ、こっちに移動したけど・・・・・ホントに手当てしてくれんの?」
「す、するよ!・・・・・・だ、か、ら、さーァ!!とりあえずニヤニヤしないでくれませんか・・・・??」
「んーー??無理ですねー。」

ニヤニヤさせてんの、誰だよ。

あからさまに視線を泳がせて強気な台詞が尻すぼみになっていく名前さんをみて今までにない手応えを感じる。俯く顔を覗き込むように首を傾げれば、珍しくキッと睨まれた。だけど、そんな真っ赤な顔でガンつけられても全然怖くないし、こんなにカワイイ反応見せられて顔を緩めないでいられる方法があるなら教えてほしいんだよな、逆に。

名前さんが俺に甘いなというのは常々自覚していた。甘えられるのに弱い。必要とされて、頼られることに弱い。
それを弱みとして漬け込んでいる自分はあんまり男らしくねぇなと思うけど、なんせ惚れた相手は生憎6年間もある小学校時代すら被らない年上の社会人だった。『何となく一緒にいるうちにノリで付き合うことになりました』なんてそんな都合のいい展開を名前さんに望めないのは分かってる。

リスキーだよな、中学生と恋愛なんて。

頭では分かっていても、年齢を理由に諦められるほど俺は大人にはなれない。どうにか言わずともこの気持ちが目の前のこの人に伝わんねぇかな、そんな甘い期待で目の前に膝をついて手当てを始めた名前さんの一挙一動を眺めていると、

「・・・・・・イジワル」

成人した大人とは思えないあどけない一言が拗ねたような表情から放たれる。気のせいかもしれないけど、そこには確かに甘さを含んでいたような気がして、ぐっと胸打たれた。

・・・・・・ズルくね・・・・・・?大人のくせにこんなカワイイとかズルッ・・・・・・。

暴走しそうになる俺を鎮めるために、とりあえずすぐそばで眠るカワイイ妹達を視界に入れておく。

コイツらいっから。マジで盛ってる場合じゃねぇから。

熱に浮かれた頭を冷ますべく必死に無になって溢れ出てくる煩悩を殺していれば、再び視線と意識は不器用ながらに真剣に手当てする目の前の名前さんにすんなりと攫われる。衝動的に捲り上げられたスウェットから覗く白い腕をひきそうになる自分を必死に諌めていれば、

「ちょっと・・・・・・そんな見られたら手当てしにくいんだけど」

ついに名前さんが手当てする動きをピタリと止めた。

どうにも俺の熱い視線に耐えきれなかったらしく、熟れたトマトみたいな顔で唇を尖らせて抗議する。アー、カワイイッ。早く俺のものにしたい・・・・・・。考えてるだけで緩みきるにやけ面を押し殺す方法なんかどこを探しても見当たらない。

「ッハハ、名前さん、結構不器用だなって思って」
「そ、そりゃあ確かに器用ではないけど、そんな見られたら誰だって手元狂うよ。」
「そう?俺なら名前さんに見つめられてももっと上手くできる自信あるな」
「ッなにそれ!!?じゃあ自分でやりなよー!!」
「ハハ、ぜってーヤダ。」
「・・・・・・」
「ほら、中途半端に投げ出すなよ」

むくれっつらや言い訳すら可愛く思えてくるんだから本当重症。うずうずと沸き立つ加虐心に自分を見失いかけそうになる。自分がこの人に好意を抱いていることはとっくに知っていたけど、これでちょっと自覚した。

俺、夢中だわ、このオネーサンに。
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