家で花火が見付かった。もう、だいぶ季節外れだ。する事もないし、来年には湿気てしまっているだろうから捨てようとすると十四郎さんはやろう、と言い出した。

「季節外れだよ」
「いや、やろう。もったいないし…あと…」
「あと?」
「名前と花火みたいし」

ドキッとした。これは、やばい。こんなイケメンに目を見てそんな事言われて、嫌だなんて言えない。

「わ、かった」
「よし。外でよう」



上着を羽織り外へでる。やっぱり秋の夜は肌寒い。それに対しさっきの攻撃で食らったダメージは深く、まだ心臓がどくどくいってる。深呼吸し、靴を履くと十四郎さんは手を差し出した。

「ほら」
「…えっ」
「早く」
「はっ、はい」

差し出された手を掴むと十四郎さんはふわりと笑って歩き出す。繋いだ手がヤケに熱い。これは病気か。

「寒いな」
「は、はい」
「どこら辺でやるんだ?」
「ちょっと歩くけど、近所迷惑にならない場所で…」
「そか。ちょっと遠いか」

十四郎さんはちょっと遠いを強調した。ちょっと遠いと言うことはその間ずっと手を繋いでいると言うことだ。強調された意味が分かった途端にこの人は意地悪だと思った。顔を赤くして十四郎さんを見ると凄く笑顔だった。やられた。

「高校どうだ?」
「たっ、楽しい」
「…何緊張してるんだ?」
「だって、手が」

墓穴を掘った。十四郎さんはニヤニヤしていた。やっぱりこの人は意地悪だ。

「もう!着いたよ!」
「もうか、早いな」

恥ずかしさに耐えきれず手を離すと十四郎さんは物足りなそうな顔をした。かわいいけと、やっぱり許せない。手際よく花火を準備し、ろうそくに火を付けた。花火を火に近づけるが、全くつく気配がない。

「…湿気てる、全部」
「まじか」
「残念、帰ろっか」
「いや、まだある」

十四郎さんは打ち上げ花火を取り出した。火を付けると導火線から火花が散る。パンッと言う音が上空で鳴り綺麗な花火が上がった。

「綺麗」
「だな、来年もまたこの時期にやろう」
「やるなら夏でしょ?」
「いや、寒い方がいい」
「なんで?」

そう言うと十四郎さんは私の手を掴む。

「こうできるからな」

一気に体が熱くなる。私はこの人には敵わないなと確信した。帰り道も手を繋いで私が全力で照れていたのは言うまでもない。


20110927 攻める土方

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