「えぐっううっ」
「もう泣かないで」
「名前ちゃんーうっ」
俺が剣術を学ぶようになったきっかけ。身体がか細かった俺はいつもいじめに遭っていた。その度に自分より身体が成長していた名前にいつも助けられていた。
「僕、強くなるよお」
「うん」
「名前ちゃんが頼れる男になるんだよう」
「ありがとう」
この日を境に俺は変わった。剣術を習い、人一倍努力したお陰でこの辺りじゃ負けない程に強くなった。だが稽古に没頭するあまり名前と疎遠になってしまった。名前が引っ越した話も近藤さんから聞いた。俺は次に名前に会うときは強い男になってから会おうと決めていた。
「…なんて、昔の話。今更教えられるわけねーだろ」
「ん?なに?」
「いや」
名前は昔仲が良かったか細い男の子を俺だとは思わないだろう。寂しいと言えば寂しいが、覚えてないのは仕方ないと思う。
「…名前ちゃん」
「どぅわ!」
「…何だよ今の声」
「ちょっと小さい頃仲良かった男の子のこと思い出した。なぜだ」
「…知らねえ」
「えっなんでちょっと笑ったの?え?なんで?」
20110925 土方の昔話