昨日、たぶん俺は彼女にフラれた。
なぜたぶんという風に言い切れないかというと、彼女は何も言わなかったからだ。突然のことで戸惑っている間に日付が変わってもう夜中も佳境に差し掛かる。寝てないと昨日とは言い辛いのだが、日付的には昨日の話なのだ。


「総悟はすごいねー」
「きっと誰よりも強いよ」
「強い人はかっこいいよね」


近藤さんからくすねた、普段は一切吸わない煙草に火をつけると吸い方がわからなくて咽る。気持ち悪い。嗚咽が止まるとまた昨日のことを思い出す。





俺は、彼女に好いてる男がいるのだろうと問う。そしたら彼女は無言の肯定をしてみせた。俺がいくら彼女に言い寄ろうと彼女が俺に振り向くことはないのだろう。暑い日差しと熱い視線を、アイツが独り占めしている。俺はそれを彼女の傍らから盗み見ていた。
彼女の熱い視線がアイツに向けてあることを認めたくなくて、俺は彼女を抱きしめた。耳元で彼女が俺を呼ぶ声が聞こえて胸がざわつくのと、彼女の肩越しにアイツの表情が見えた。


「どうしたの・・・?」


彼女の肩を開放する。恐る恐る聞く声がとても愛おしくて、俺はその場を立ち去ることしかできなかった。自室に戻るとアイツが追いかけてきた、よりによって、なんでお前が。


「オイ総悟、今のなんだ」
「何がですかィ」
「隊士同士の色恋沙汰は禁止のはずだ」
「はァ、そっすか」
「お前、口を慎め」
「その取り決め、アンタには適用されないんですね?まァお偉いさまには関係ないですもんねィ」
「おい!」
「出て行けよ、アンタが一言発するたびに俺はアンタを殺しそうになる」
「っ」


ふすまが閉まると俺は握りしめていた刀を離した。一気に体の力が抜けてため息をつく。今まで通り普通に過ごすなんてもうできない。一歩踏み出せば足元が崩れ落ちるなど百も承知だった。


「あーあ、」


昨日、たぶん俺は彼女にフラれた。

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