退屈な数学の授業をさぼれるのも二年の間だけだと思ったらなんだかとても時間が短い気がして、よく晴れた日の水曜の三限に屋上に来た。サボった授業はもちろん数学だ。屋上の重たいドアを開けると風がぶわっと吹いて清々しい。セミの鳴き声とグラウンドでやってる体育のサッカーの応援が微かに聞こえて、夏らしいと思った。
フェンスの近くまで行ってグラウンドを見下ろす。得点板を見るとビブスを着てるチームが負けてるようだ。ふうん、と思いながら空を仰ぐように寝転がろうと腰を下ろすと反対側のフェンスのほうに人がいることに気が付いた。

「先客かよ」
「ごめんね、先に居て」
「いや、別に」

女だ。女だが、俺より髪が短い。白い制服に長い脚がよく映えている。左手首には綺麗な青いブレスレットをしていた。

「坂田君でしょ、二年の」
「何で知ってんの」
「髪色。三学年でも有名」
「ああ、・・・アンタ三年なんだ?サボってていいの?」
「年上を敬えよガキ。私は頭がいい」
「・・・ふうん」

上から目線の女だと思うと同時に、やけにかっこいい人だと思った。そして彼女は汗ひとつ掻いていなかった。いくら屋上で風が吹いているとはいえ、真夏なのに。なんでかわからないけど、ほかの女じゃ絶対にぐっと来ないはずなのに、この人だけは白い肌とか、汗かかないところとか、そのたもろもろも色んなところが俺のナニカを掴んで離さなかった。目が離せなかった。

「・・・先輩さ、志望校どこ?」
「何?ついてくる気?」
「調子に乗んな。・・・聞いてみただけ」
「へえ?・・・最高学府だよ」
「は?まじ?」
「まーじ」
「こんなところでサボってていいの」
「二回目だねその注意」

この学校はある程度レベルが高いが、そんな人間がこの学校に存在するなんて思ってなくて、正直驚いた。ちょうどいいタイミングで風がビュウと吹いて彼女のスカートがひらりとする。男の性とはしょうもないもので、こんな割と真剣な話をしている時ですら、俺は彼女のスカートの裾あたりに目が行ってしまった。

「・・・俺も、目指そうかな」
「やっぱりついてくるんだ」
「ちげーよ、せっかくだしってことだよ」
「せっかくで受かれるほど甘くないよ」
「これから頑張るよ」
「へえ」

グラウンド側からウオオと太い歓声が聞こえた。点でも入ったかな。

「だから、さ」
「ん?」
「俺が同じ大学に入れたら、俺と付き合ってくれませんかね!」
「・・・はは、これんの?」
「行くんですよ」
「・・・ふうん、まあ、いいよ」
「まじすか!」

グラウンドでは試合終了のホイッスルが鳴って、同時に授業終了の鐘がなった。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -