高三になってやっと受験に対する意識が強まり、ここ最近はちゃんと勉強できてる。私は学校の図書館で勉強するより、図書館で勉強するのが好きだった。三月はずっといろいろな図書館を転々として、やっと定期圏内で私の理想の図書館をみつけた。そこは古い本が沢山並んでいて、その本棚の間にぽつつと机が置いてある、知っている人しか来ないような図書館だった。私はここで受験勉強に励もうと決めた。





四月に入って、私のお気に入りの勉強スペースに新たに人が加わった。制服を見るからに、どうやら私と同じ学校の人のようだ。男子の学ランは他学年と区別がつかないから何年生かはわからなかった。それにしても、かっこいい男の子だ。四人掛けの席で斜め前に座る彼。ちらと彼のほうを見ると、彼も私を見ていて目が合った。彼はとても驚いた顔をして、すぐに目をそらした。

しばらく勉強に集中していたら、突然私の机にホットのミルクティーが置かれた。何?と思って上を見ると斜め前に座る彼が照れ臭そうに立っていた。

「さっきはなんか、スイマセン」
「・・・何が?」
「いや、目、逸らしたし」
「あ、気にしてないよ」
「これ、お詫びに」
「え、悪いよ!」
「もらってください」
「・・・じゃあ」

ミルクティーを手に取ると、彼はそそくさと斜め前の席に戻る。少し耳が赤いのが可愛く見えた。

「君、名前は?」
「・・・土方十四郎」
「へー、剣道部?」

指定の学生鞄の隣に校章が入った大きな鞄を持っていた。クラスメートにも剣道部はいたからそれと同じ鞄を持っていてピンときたのだ。私の高校は剣道が強いらしいし。

「ハイ、」
「剣道部大変そうだよね、練習の声教室棟まで聞こえるよ」
「まあ、でも強くなりたいんでキツイ練習も仕方ないっていうか」
「そうだね、十四郎くん何年生?」
「っ、一年ッス。先輩は三年生ですね」
「うん、なんでわかったの?」
「リボンの色で」
「・・・あ、そっか」

図書館内なので小さな声で話す。なんだかいけないことをしているようで少しわくわくした。

「今日は練習無いの?」
「今日は新入生は練習のレベルを見て帰宅って感じでした」
「練習したかった?」
「・・・少し」
「熱心だねー、明日から練習?」
「ハイ」
「頑張ってね!」
「・・・ハイ」

その言葉を最後に私たちは勉強に切り替えた。帰り際に挨拶を交わし、私は帰路につく。その日は彼のことが頭から離れなかった。





それから彼とは、図書館で毎日顔を合わせた。彼は夜遅くまで練習で忙しいのに毎日図書館に来るなんて熱心だな、と思った。まあ、たまに居眠りはしてたけど。多少の下心はあったけど、彼をいたわる気持ちで、図書館で差し入れをあげた。差し入れと言っても飴玉くらいだけど。それをあげると彼は顔を真っ赤にして喜んでくれて、それがなんともいえないほどかわいくて、私はそれから差し入れを買い忘れることがなかった。

「名前さん!」

突然話しかけられてびくっとする、この大きな声はたぶん、近藤くんだ。

「近藤くん、何?」
「最近トシを可愛がってくれてるみたいだなー」
「トシ?」
「土方十四郎」
「ああ、可愛がってる・・・のかなぁ」

近藤くんはにやにやしてる。

「トシが名前さんのことをちょくちょく聞いてくるんだ」
「え?」
「好きなものはないかとか、誕生日を知らないかとか」
「っ、」

これは、恥ずかしい。本人から聞かれるほうがまだ恥ずかしくない。

「俺が名前さんとは親しいわけじゃないから知らないってつっぱったら、トシのヤロー、シュンとして帰ってなー」
「そ、うなんだ」
「まあ、これからもトシと仲良くしてやってくれ」
「うん」
「誕生日とかは、名前さんが本人に教えてやってくれよ」
「・・・わかった」





その日の図書館でその話をしたら、十四郎くんは顔を真っ赤にして図書館を去って行った。もう来ないのかなとか心配しながら学校に行ったら、近藤くんが顔を腫らして学校に入ってきたから理由を聞いたら、トシに殴られた、名前さんのせいだぞ、って言われたけど、意味が分からなかった。

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