今日の天気予報では雨の予報なのに、今は霧が濃くて前すら見えない。数メートル先には何がいるか分からなくて、安心して先に進むことも出来ない。帰れないと危険だから、と早めに学校から解放されたはいいが、むしろ早く帰ったせいで一日で一番霧が濃い時間に帰らなくてはいけなくなった。その方が危険なんじゃないかと私は思う。玄関で立ち往生していたらクラスメートの彼から話しかけられた。


「霧…」
「あ、高杉くん」


不良と名高い彼は相変わらずの仏頂面で外の濃霧を睨みつけている。こんな男がなぜモテるのだろう。ただちょっとワルイ感じを醸し出してるだけじゃないか。


「…家どこ」
「え?…あっち」
「ふぅん」


そう言って彼は濃霧の中をずかずかと進んでいく。どこにいくんだろう、ともうすぐ見えなくなる彼はピタリと立ち止まり振り返る。


「早くしろ」
「え?」
「何度もいわせんな、早くしろって」


何やら怒っているようなので急いで彼についていく。隣に追い付くと満足げにニヤリと笑う彼を見上げた。この角度は絶景としか言いようがない。


「今日から毎日この時間に玄関に居ろよ」
「え?なんで?」
「いいから」


少し歩くペースが早まった。追い付こうと彼の隣にまた駆け寄る。帰り道の中、彼は幾度となくポケットに入れている手を出してはしまい出してはしまいを繰り返していた。どうしたのだろう。

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