小説 | ナノ


蛍丸と喧嘩した。あるじなんて知らないよ!ばか!そう言って本丸を出て行った彼に、私も売り言葉に買い言葉と云う奴で。すこし時間が経った頃、燭台切さんに後でちゃんと蛍丸に謝ろうと言われた。私も言いすぎたな、と思って胸がずきずきしていた頃合いだったので蛍丸を探しに行こうと本丸を出た。
基本的に審神者は本丸を一人で出歩く事はない。守り刀の一人位は連れて居なければいけない、けど、今の私は蛍丸に謝りたい一心で彼を探していた。

少し日が落ちた頃、がさりと後ろから物音。普通なら警戒しなければいけない所だが、安易に振り向いてしまった。するとそこにはいつも戦っている、敵。敵に後ろを取られてしまっていた。
どうしよう。このまま殺されてしまうの?蛍丸に謝れないまま、みんなを現世に残したまま殺されてしまうなんて。そう考えたとき、目の前の兵士たちが一斉にその場に崩れ落ちた。

「じゃーん、真打登場ってやつです」
「蛍丸」
「主はばかなの?こんな日暮れに一人で外に出るなんて」

僕がここに来なかったら死んでしまっていたんだよ。そう言って抱き締められた。私より小柄な蛍丸の温もりは何より安心するもので、何より求めていたものだった。
蛍丸ごめんね、ってぽつりぽつりと言えば、怒ってないよって笑顔で返してくれる。そして私の着物についた埃をはらってくれた。

「あるじ、帰ろ。王子様が迎えにきたって事で、手なんて繋いでさ」

そう言って笑う蛍丸の顔は、誰よりも王子様だった。

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