小説 | ナノ


 安定くんはちょっとお口が悪いねえ、そういつもおっとりしている主がそう言った。僕はそう意識しているわけでは無いけれど、たしかに戦場に行くとついかっとなって悪い言葉が出るかもしれない。でもそれは主に向かっているわけではないし、仲間たちにも同様だ。まあ、清光なんかは長い付き合いだから出てしまう事もあるけれど。
 でも主にそういわれてしまうなんて少し悲しくもある。いつもいつもみんなに優しい主はもちろん僕にも優しいし、敵にも優しい。だからこそ敵への暴言が目についたのかもしれない。

「ごめんね主。もう言わないって約束はできないけど……」

 そう主の顔を見つめて言えば、にっこりと微笑んだ。あ、主が満足したときにする顔だ。そう思ったら僕も自然に笑っていた。長いこと戦に居るとこんな笑顔とは無縁だったな、なんて考えてたら主の頬に自然と手を添えていた。やすさだくん、なんて声が聞こえたけれど気にしない。だって結構目の前のものは失いたくない方なんだ。だれかに取られるなんて以ての外。

「主がいけないんだよ、そんな顔するから」
「そんな顔?」
「手に入れたいって思う顔だよ」

 僕が言って主の額へ口を付ければ変な声がした。そのあとの主の顔は真っ赤に染まっていて、それは今まで僕が見ていた赤とはくらべものにならないくらい愛しいものだった。赤なんて、清光か血か、っていう程度だったけれど、この赤はずっと僕の手中におさめていたいな、なんて。そう思った。

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テーマ「人外ファンタジー」
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