小説 | ナノ
鳴狐の狐さんを発見して話を聞いてみれば、本体の彼は今お昼寝をしているとのこと。寝顔を見てしまおうかと考えて狐さんのだめですう、だめですう主殿お!という静止の声を振り切って鳴狐のお部屋へ強行した。
そこにはすやすやと寝息をたてる彼。普段と変わるところといえば、いつもつけている口元のそれが無い事だろうか。よく見えないと思っていた彼の顔がよく見える。さすがに寝るときは外すんだな、なんて考えながら顔をまじまじと覗き込んでみた。
狐さんもさすがに本体が寝ているからなのか、主殿は悪戯がお好きなご様子ですなあ、と静かな声でつぶやいた。別に悪戯するつもりはないけど、いつも考えてる事のわからない彼の事を知れるかな、なんて考えただけの話で。
すると彼のほうから低い声であるじ、という声が聞こえてきた。起きちゃったかなと思って彼を見れば薄らと目を開けていた。狐さんが、おお鳴狐!起きたのですね!と声を上げるが寝起きで思考が定まっていないのかうつろな目で鳴狐がこちらを見つめてきた。寝顔をこっそりのぞいた事を怒っているのだろうか。
「ご、ごめんね、つい出来心で!」
「出来心…」
そう私が言うと鳴狐はにやりと普段は見せない顔で笑った。
「あるじ、おしおき…するよ?」
そう耳元でささやかれたと思ったときには、もう私の口は彼のそれとくっついていた。
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