小説 | ナノ


ほんものではない事を後ろめたく思っていた。だから主とは必要以上に近寄らないし話もしないように努めたつもりだった。しかし主は事あるごとに俺に近付き、話しかけてくる。今日のお昼ご飯美味しかったね、だとか、非常にどうでもいい内容ばかりだけど。
俺はそれが自然と心地よくて、段々主にこころを開いていったのかもしれない。話しづらいと思っていた靄も無くなった気がした。

ある日主は俺に言う。「もうちょっと自分に自信を持てば良いのに。あなたは充分強いし、私の側に居てくれるし、私はあなたを大事に思っているよ。」そう言った。俺は主に、写しであるという事の後ろめたさやら、いつか主に捨てられてしまうのではと言う気持ちを話す。こんな事を言えば嫌われてしまうだろうか、でも、これ以上主に隠す必要はないと思ったのだ。

「そんなに本物が恋しいのなら、私が本物の愛情をあげる」

あなたの本物はそれだけで充分でしょう?と微笑んだ主は、今まで見たどの表情より美しく見えたのだ。

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