>> 05

名前の様子がおかしい。





付き合って暫く経った頃。名前とは仲良くしていた。テニスと学校で忙しかったけど時間を見つけては名前に会いに行っていたた。

そんな中サークルで飲み会があって、入学当初から仲良くしてくれてる子と帰りが一緒になった。…まあ出来心ってヤツや。ホテルで一晩過ごしてしまって、俺はそれからどっぷりその子にハマってしまった。

正直なトコ名前より全然タイプやった。可愛らしくて、女の子らしくて…気付いたらどんどん好きになってしまっていた。

名前よりその子に時間を割くようになったんやけど、それでも名前の事もまだ好きやったから別れるなんて出来なかった。

名前と会う時間はどんどん減った。記念日もクリスマスも浮気した子と過ごした。名前が可愛いと言っていたペアリングをその子に買ってやった。最低な事を、した。



でも何ヶ月経っても名前と別れようとは思えなくて、このまま微妙な関係をズルズルと続けていた。

そして迎えた名前の誕生日。本当は連休やったんやけど、名前とは夜少しだけ会って、あとはアイツと過ごそうと思っていた、のに…


『メール?きてないよ』


嘘やん、俺しっかり送ったで。誕生日おめでとうって。電話もしたのにそれについて全く触れて来ない。





名前はどんどん派手になっていった。髪色も明るくなって、化粧も濃くなって、ピアスも増えて、本人には言うてへんけど煙草吸ってるのだって知ってる。

名前が変わったのは外見だけやと思っていたら、学校もいつの間にか辞めていて。

そして極めつけは、誕生日に右手にはめていたリング。見覚えのあるデザインやった。それは名前が好きなブランドのリングで。

それが妙に気になって、でも名前には聞けなくて。浮気してる俺にはそれを聞く権利なんてない。

しかし、イライラが募って名前を夢中で抱いた。首筋のキスマークを見付けてからさらに激しく揺さ振った。


「ずっと居ってええ?」


正直、焦っていた。浮気をしている事で名前に対して常に余裕を見せれていたのに…。名前が浮気しているのではないか、そう思えば思うほど、名前への気持ちは強くなった。

名前を手放したくない、と思った。










「蔵、まだ帰んなくていーの?」

「今日はずっと一緒って言ったやろ」

「明日学校は?」

「昼から。せやから、明日の朝帰る」

「そ、そんなにいいの?」

「ええから言うてるんやろ。」


夕方起きて、また名前を何度も抱いた。首筋のキスマークにはとっくに俺が上から自分のを重ねてやった。そして体中に俺の印をつけてやった。

久しぶりに名前と長い時間を過ごした。結局浮気に関する事は何も聞けなかったけれど、昨日今日と一緒に居れて安心したし、何より落ち着いた。

やっぱり俺は名前が好きなんやと改めて確信した。










「ほな、俺帰るわ」

「うん、じゃあね。蔵…祝ってくれてありがとう」

「彼女の誕生日やから当たり前やろ」

「本当ありがとね。」

「ああ。また連絡する」

「…!う、うん、また、ね。」


また、なんて言ったのは久しぶりな気がする。正直いつ会えなくなってもいい覚悟はしていた。でも今日は違う。またこれからも、名前に会いたい。





浮気相手とも切れんくせに、名前をまだ縛り付けておきたいと思う俺は端から見たら最低な人間なんやろな。

でもそれでも、二人とも手放したくないんや。





20110411


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