>> 04

蔵のアホ。私の誕生日なのに連絡一つくれないなんて。





光がどうしてもと言うから蔵との待ち合わせの時間までホテルに居る事にした。

光がくれた指輪は左手にははめれないから右の薬指にはめた。蔵がこれに気付いても何も言わないはず。もし言われても友達にもらったんだーって会話して終わりだと思う。


「ん…、ひか、る…?」

「あ、起きたんや名前さん」

「あれ、私どれくらい寝てた?」

「めっちゃ寝てましたわ」

「わーごめん!しかも重かったでしょ?」

「全然。腕枕で重いとか無いっすよ。しかも名前さん軽いし」

「うう…ごめん…」


光は私が寝ている間ずっと腕枕して、抱きしめてくれていたみたい。

心地好かったけど、やっぱり罪悪感は拭いきれない。もちろん蔵への。そして光へも。


「あ、そろそろ行かなきゃ」

「そしたら家まで送りますわ、俺バイクで来たんで」

「いいの?」

「ええっすよ、ちょっと歩くけど大丈夫っスか?」

「うん、大丈夫。」


光と二人並んで歩いた。こうして見ると私と光は恋人同士に見えるのかな。本当はそんな綺麗な関係じゃないのにね。ただの浮気相手でしかない。


「名前さん、しっかり俺に捕まっといてくださいよ」

「はーい」


光に腰にしがみついて慣れないバイクに乗る。家に着くと、また連絡しますと言って光は帰って行った。










約束の時間まで少し余裕があったから蔵の好きな料理を作った。私の誕生日なんだけど…ね。蔵は多分疲れてるだろうから外食とかは無いと思う。去年は二人でお洒落なレストランにご飯食べに行ったんだったっけ。もう遠い思い出だけど。

プレゼントには腕時計を貰って、毎日付けてる。蔵にも腕時計を贈った。浮気相手の子には何貰ったんだろ。…考えるのも無駄か。ダルくなってタバコをつけたらチャイムの音がした。


「いらっしゃい」

「名前、誕生日おめでとう」

「ありがと。もう終わっちゃうけどね」


タバコを急いで消して蔵を出迎える。


「じゃ、どっか行こか?バーならまだやってるしな」

「え…?」

「ん、メール見てへんの?」

「メール?」

「あ…、いや何でもあらへん」

「え…、あ、うん、そうだ蔵、ご飯作ったから食べよ」

「おん」


メールの話が気にかかったけど、たぶんあの子に送るメールと間違えたんだろうと思って気にするのをやめた。それより今日は蔵を独占したい。たぶん朝に帰っちゃうんだろうけど、誕生日くらい私が蔵の時間を少しくらい貰っても、いいよね?


「これめっちゃ美味いで」

「でしょ?蔵の好きなものいっぱい作ったんだよ」

「名前の誕生日やからホンマは立場的には逆なんやけどな」

「だって時間余っちゃったし、蔵に喜んでもらいたかったから」


蔵は美味しそうに私の作った料理を食べてくれる。久しぶりにこういう時間を過ごした気がする。いつもエッチして暫くしたらもう蔵は帰ってしまうから。今日一緒に居れるだけで凄く嬉しい。


「せや、名前」


料理を食べ終わった頃、蔵が私に小さな紙袋を差し出した。


「誕生日プレゼントや、開けてみ」

「わあ…っ、嬉しい。ありがとう、蔵」


中に入っていたのは私の好きなブランドのネックレス。…正直、指輪じゃなくてホッとした。ていうか蔵が私の好きなブランドを覚えていたなんて意外。


「名前、ここのアクセサリー好きやったろ。気に入ってくれて良かったわ」

「ふふ、ありがとう。かわいい。」

「あとケーキも買ってきたんやで」


蔵が買ってきてくれたのは私の大好きなチーズケーキ。しかも1ホール。


「嬉しいけど…、こんなに食べきれないよー。」

「俺も食べるからええの。」


それから二人でたくさんあるケーキをひたすら食べた。「そんなに焦って食わんでもええのに」って蔵は言うけど、今日を逃したら蔵は二度とこのケーキを一緒に食べてはくれないと思ったから。

だって次会えるのはまた何日後か分からないのに。

ケーキを苦しみながら食べ終えたら、蔵に口元についてるクリームを舐められた。そうこうしてるうちに蔵の唇と私の唇が重なって、段々深いものへと変わる。


「ん、は…あ、蔵、ベッド行こ?」

「すまん、今日は待てへん。」

「え…ん、ひゃあっ、」


いつも蔵は必ずベッドでするはずなのに、今日はおかしい。私を抱く時もこんなに性急にする事はなかった。


「は、ん…っ、あ、蔵、今日どしたの…?」

「名前の誕生日やから特別サービスや。今日は何回でもしたるから、次はベッドでしよな」

「ふ、うんっ…」


床に押し倒されて服を脱がされて、大して慣らしもしないうちに蔵が挿入してきた。


「ひゃ、あああっ、く、らぁっ…」

「名前…」

「や、激し、いよぉ…っ」

「たまにはこういうのもええやろ?」

「う、んああっ、あ、」


濡れきってないうちに擦り付けられて痛かったけど、すぐに快感に変わった。いつもの蔵と違うけど、逆にそれが嬉しかった。なんだか今日は昔に戻れた気がして…


「は、…出す、で」

「う、ん、くらぁ、いっぱい出してぇっ…!」

「あ、はあっ…、っ、」


蔵の精液がお腹に出されて、またそれを蔵が優しく拭いてくれる。いつもは少し抱き合ったら帰ってしまうけど、今日は違った。


「明日、休みやねん。ずっと居ってええ?」

「え…、う、うん、もちろん」


なんと珍しい事に、その夜は何回も体を重ねる事になった。もちろん起きてからも。さすがに体に限界が来たので昼前にはまた寝てしまったけれど。





誕生日だから特別に一緒に居てくれてるのかな。クリスマスに会えなかった分、今こうして長い間蔵と一緒に居れて、蔵の腕に抱かれながら眠れて、幸せだった。





やっぱり私は、蔵が好き―――――。





20110409


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