>> 02

名前さんと俺がよく会うようになったのは、名前さんと白石先輩が付き合って半年くらい経った頃だった。

二人が付き合ったのは謙也さんに聞いたから知っていた。違う大学に通ってたのにようラブラブで続いてるなと思った。でもそれはただの勘違いやった。





それはクリスマスイブの日。彼女なんかおらへんから適当に街をぶらついてた。そしたら白石先輩に会った。いや、正確には見かけただけ。声を掛けようと思ったんやけど、隣に居たのは名前さんやなくて知らない女。先輩のモロ好みっぽい可愛らしいふわふわした女やった。



驚いたのはそのあとの事。二人を見てるのは俺だけじゃなかったから。


「名前…さん?」


そこにおったのは、今にも泣きそうな顔をした名前さんやった。


「財前くん…?」


これが俺と名前さんの運命の再会やった。










何でも白石先輩とその人が入っていった店は名前さんが好きなブランドの店だったらしく、そこでペアリングを買うことを約束してたらしい。

でも先輩は名前さんやないその人とペアリングを選んでいた。


「本当は気付いてたんだよね、蔵が浮気してるの」

「…せやったら何で白石先輩に言わないんすか?」

「言えないよ。だって私…蔵のことが好きだもん。」


浮気されたって何されたって蔵が好き。



そう言った名前さんを見ていたら、抱きしめたくなった。この人はアホや。酷い事されとんのにまだ先輩を愛してる。そんな名前さん、見てられへん。


「名前さん…せやったら、俺が慰めますわ」

「財前く…、んっ」

「せやから今は俺の事だけ考えてや」


ずっと、好きやった。

白石先輩をずっと見てんのも知っていた。練習や試合を見に来るのも、俺やのうて先輩を見に来ていた事くらい知ってる。

でも俺にも笑いかけてくれる名前さんが大好きやった。ずっと俺だけのモンにしたいと思っていた、のに…


「は、んっ…、ざいぜ、く…」

「かわえーよ、名前さん。」

「ひあ、ん、ああっ」


夢みたいやった。名前さんを抱けるなんて。



行為が終わった後、名前さんを抱きしめながら眠った。柔らかい名前さんの体は心地好くて最高やった。

神様からのどエライクリスマスプレゼントや。


「なぁ、名前さん」

「ん?どしたの?」

「これからも時々…寂しくなった時だけでええから俺と会ってくれへん…?」

「で、でも…私も蔵の事言えなくなっちゃう…」

「ええやんか、先に浮気したのは向こうなんやし。名前さんだけに寂しい思いさせたくないっすわ」

「財前くん…」

「嫌になったら切ってくれてもええから。俺が名前さんを慰めるから」

「うん…、ありがと…」





それから名前さんはどんどん俺色に染まっていった。

2つしか空いてなかったピアスを俺と同じ5つに増やした。開けたのはもちろん俺。ピアスも俺が買ってやった。



『名前さんは明るい髪の方が似合いそうっすわ。ついでに髪短くした方がええ』

そう言って美容院に無理矢理連れて行った事もある。白石先輩が大好きやった名前さんのサラサラの茶色いロングヘア。今は俺が言った通りのミルクティーのボブになった。こっちのが断然可愛ええっちゅー話や。



知らん間に化粧も濃くなってタバコも吸うようになっていた。名前さんは俺が派手好きだと思ってたらしいけどそれは違う。名前さんが好きなだけや。

でも俺には止める権利あらへんから、本人の好きにさせてやろうと思って何も言わんかった。どんなに見た目が変わっても俺が名前さんを好きな事には変わりはないから。





「今日蔵にピアスの事言われたんだ」

「そうっすか。ちなみに、先輩何て?」

「嫌そうな顔してた。また嫌われたかなー…」

「ええやん名前さんには俺が居るんやから」


そう言って彼女を抱きしめてベッドに押し倒した。

さっきまで白石先輩が来ていた名前さんの部屋。先輩とセックスしたベッド。

今度は俺の匂い、染み付かせてやりますわ。





20110408



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