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光が帰ってから蔵に電話をかけた。

私、肝心な事忘れてた。蔵にまだ自分の気持ちちゃんと伝えてない。



しばらくしてインターホンが鳴って、蔵を中へ迎え入れた。あの頃と同じように。


「いらっしゃい」

「久しぶりやな」


蔵の好きだったチーズリゾットをすぐに作って出してあげた。蔵は嬉しそうに食べてくれて安心した。あの頃…付き合いはじめた頃と何一つ変わらない。


「やっぱ名前は料理上手やな」

「いいお嫁さんになるでしょ」

「ああ。旦那さんもイケメンやしお似合いの夫婦やで」


蔵はそう言ってカバンの中から小さな箱を取り出した。それを開ければ、キラキラと光るダイヤの入った指輪が二つ入っていた。


「蔵、これ…」

「卒業したら結婚しよう」

「…私まだちゃんと蔵に好きって言ってないのに」

「ええよ。あー…それやったら今言ってくれたらええんとちゃう?」


蔵は私の指に指輪をはめてくれて自分の指にも同じ指輪をした。しかもこの指輪は私が欲しかったブランドの、デザインは違うけど可愛いと言っていた指輪で。


「先越されちゃったけど…蔵が好き。色々回り道しちゃったけど私はやっぱり蔵が好きだよ」

「知っとるよ」


蔵に腕を引かれて抱きしめられた。


「この指輪…覚えてたんだ」

「当たり前やろ。さっき急いで買ってきたんやで」

「ありがとう」

「でもこれからが大変やな…名前辞めなアカン事いっぱいあるからな」


それは私にも分かってる。派手な化粧と穴だらけの耳、タバコに派手な髪の色、だよね。


「とりあえずタバコからやめてみる」

「…化粧とピアスも」

「はいはい。あれ、髪はいいの?」

「ええよ。俺と同じ髪色っちゅー事で免除や。愛されてる感あるしな」

「う…まあ否定はしません」

「ホンマかわええなあ名前」


まだ私達は始まったばかり。

空いてしまった時間を、ゆっくり埋めていこうと思う。


「私を…蔵のお嫁さんにしてください」


これから、二人で。





20110723

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