>> 20 光が帰ってから蔵に電話をかけた。 私、肝心な事忘れてた。蔵にまだ自分の気持ちちゃんと伝えてない。 しばらくしてインターホンが鳴って、蔵を中へ迎え入れた。あの頃と同じように。 「いらっしゃい」 「久しぶりやな」 蔵の好きだったチーズリゾットをすぐに作って出してあげた。蔵は嬉しそうに食べてくれて安心した。あの頃…付き合いはじめた頃と何一つ変わらない。 「やっぱ名前は料理上手やな」 「いいお嫁さんになるでしょ」 「ああ。旦那さんもイケメンやしお似合いの夫婦やで」 蔵はそう言ってカバンの中から小さな箱を取り出した。それを開ければ、キラキラと光るダイヤの入った指輪が二つ入っていた。 「蔵、これ…」 「卒業したら結婚しよう」 「…私まだちゃんと蔵に好きって言ってないのに」 「ええよ。あー…それやったら今言ってくれたらええんとちゃう?」 蔵は私の指に指輪をはめてくれて自分の指にも同じ指輪をした。しかもこの指輪は私が欲しかったブランドの、デザインは違うけど可愛いと言っていた指輪で。 「先越されちゃったけど…蔵が好き。色々回り道しちゃったけど私はやっぱり蔵が好きだよ」 「知っとるよ」 蔵に腕を引かれて抱きしめられた。 「この指輪…覚えてたんだ」 「当たり前やろ。さっき急いで買ってきたんやで」 「ありがとう」 「でもこれからが大変やな…名前辞めなアカン事いっぱいあるからな」 それは私にも分かってる。派手な化粧と穴だらけの耳、タバコに派手な髪の色、だよね。 「とりあえずタバコからやめてみる」 「…化粧とピアスも」 「はいはい。あれ、髪はいいの?」 「ええよ。俺と同じ髪色っちゅー事で免除や。愛されてる感あるしな」 「う…まあ否定はしません」 「ホンマかわええなあ名前」 まだ私達は始まったばかり。 空いてしまった時間を、ゆっくり埋めていこうと思う。 「私を…蔵のお嫁さんにしてください」 これから、二人で。 20110723 prev//next |