>> 16

「あっ、…ん、くらぁっ…っ」

「名前…っ」


久しぶりに感じる蔵の温もりは付き合ってた頃とは違って何だか温かかった。


「出してええ…?」

「うん…っ、いい、よっ…!」

「はぁ…、っう、」


蔵の精液の温かさが中に伝わってきて、中で出されたんだなー、なんて他人事みたいにぼんやり考えていた。

蔵は後処理をした後に寝ながら腕を広げて、「おいで」って私を胸に埋めた。蔵の腕枕なんて、本当に久しぶりだった。


「光にバレたらどうしよう…」


蔵の腕の中で考えるのは光の事ばかり。決して殴られるわけではない。でも光を裏切った事には変わりはない。

蔵の時も光の時も、私は浮気ばかりしている。もしかして私って、浮気性なのかな…


「名前」

「何?」

「ごめんな。また俺のせい、やんな…」

「また、って…?」

「付き合うてた時も俺のせいで傷つけて、今度は彼氏居んのにヤって、むっちゃ傷つけた」

「蔵のせいじゃないよ」


前回も今回も私の弱さが招いたこと。一人で耐えられる事が出来なかった私一人のせい。だから蔵にはそんな顔して欲しくない。


「そんな事言ったら私だって蔵に浮気させちゃったよ」

「浮気?」

「裕美ちゃん…だっけ。彼女、でしょ?」


それを言うと蔵は気まずそうに「あー…」とか「うー…」とか言いながら目を泳がせていた。


「アイツとは…別れた」

「…え?」

「なあ名前、話したい事があるんやけど…、」


蔵が言いかけて突然私の携帯が鳴った。着信は光からで、電話に出ないと物凄く怒られる


『部屋に居らんから電話したんやけど』

「ごめん…、ちょっと買い物してて…。今から帰るから。」

『浮気してんとちゃうん?』

「違うよ…、後でレシートとか見せるから。じゃあね。」


早く帰らなきゃ光に怒られる。蔵の話が聞きたかったけれど今の私は蔵と一緒に居てはいけない。

私はこれ以上、光を裏切れない。

服を着てホテルの部屋を出ようとしたら蔵に腕を引っ張られた。


「アカンよ…名前。もう財前トコには帰さへん」





ああやっぱり。私はまだこの人の事が好きなんだ。





20110718



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