>> 15 「…名前!」 蔵に偶然会った。私と同じ綺麗なミルクティー色の髪色、長身、そしてあの整いすぎた顔。一目見ただけで蔵だと分かった。 「財前とは上手くいってるん?」 「あ、うん。お蔭様で上手くいってるよ」 「…なら良かったわ」 厭味っぽくなってごめんね。でも今の私は蔵に対してこんな反応しか出来ない。 浮気した事を許せない気持ちは3割くらい、光にバレたら怖いという気持ちは7割。ううんそれ以上。10超えてるけど。でもそれくらいこの状況を光に見られたくない。 「なんか痩せたんとちゃう?しっかり飯食ってんのか?」 「ちょっと夏バテ気味で…」 「夏バテにはニンニクと梅干しがな…って、名前…?」 あれ何でだろ。涙が溢れて止まらない。そういえば蔵は健康オタクで毒草に詳しくてエクスタシーとか言いまくって変な人だったけど…私にはこれが普通で、日常だった。蔵の健康のウンチクを聞くのが好きだったし、毒草の話だって面白かったし…蔵の口癖にはいつも笑っていた。 「俺何かしたか?ごめんな?名前泣かんといて…」 蔵が私を抱きしめた。私は狡いから蔵の優しさに甘えてしまった。 「ううん…っ、蔵のせい、じゃないよ…っ」 「よう分からんけどホンマに泣かんといてや。名前が泣いてたら俺も悲しいわ…」 そんな顔して私を見ないで。私また間違えちゃいそうだよ。もう浮気しないって決めたのに。 そして私は間違えてしまった。 蔵のキスを、受け入れてしまった。 (これからどうなるんだろう。私も、蔵も。) 20110714 prev//next |