>> 12 病院に行ったら見事に妊娠してました。ああ私これからどうなっちゃうんだろう。 とりあえず当たり前の如くお互いの両親には猛反対された。光はまだ学生で卒業まで暫くあるし。光が学校辞めて働くって言い始めた時にはどうしようかと思った。光の人生を私のせいで目茶苦茶にしたくない。 「すんません…俺、まだガキやんなぁ…」 「んーん、私こそごめん。光の事全然考えてなかった。てゆーか敬語やめてよ。もう先輩後輩じゃないんだから」 「敬語萌えしません?」 「しませんしません」 「ちっ。俺の魅力に早く気付かせる方法その1やったのに」 大丈夫だよ光。あなたの魅力は知っています。 高校の時から蔵や謙也くんと並んで目立っていた光。そんな彼がモテないわけなかった。かっこいいしテニス上手いし。クールなところもまた萌えポイントの一つなわけだし。 「でもさー…、赤ちゃん諦めてもいいよ私」 「は?アカン絶対アカン」 「赤ちゃんが居なくても私、光の側に居るよ」 親たちの言うことは最もで私たちに子供だの結婚だのはまだ早い。光がちゃんと卒業して就職して、それからでも良いんじゃないかな。それに… 「お金なくて周りにも祝福されないなんて赤ちゃんも可哀相だよ。産まれてから育てられないなんて事になったら、もっと可哀相」 私も殺したくないけど…。そう涙ながらに訴えたら光は私を抱きしめてくれた。 光は私のわがままを受け入れてくれたんだと悟った。ごめんね。私まだ子供だから。だから私まだ子供を育てられる自信がない。ごめんね。 「名前が側に居てくれるんやったら…。」 「…ん、ありがとう。ごめんね」 「次は絶対産ませたるから。………もう中出しせえへん。」 「うん。それだけはお願いします。」 「約束や」 ごめんなさい赤ちゃん。私が大人になったらまた私のとこに産まれて来て下さい。こんな最低なお母さんで、ごめんなさい。 *** 「…っていう事になりました」 中絶手術をして約一週間後、私は蔵に会いに来ていた。浮気相手が居るからと思って中々行けなかった蔵の部屋。今ではもう気にしなくていいし気にする理由さえ…無い。 「名前は、財前がええの?」 ここで良くないよ、なんて言えない。私はもう後戻りは出来ない。それに浮気相手の子と切れたかなんて分からなかったし、また戻ったとこで同じことの繰り返しになるんじゃないかって思ったら怖くなった。 蔵はまた浮気をする。 私にはそうとしか思えなかった。もう蔵を信じてあげる事が出来なかった。 「蔵は…あの子と幸せになりなよ。」 「名前…、俺な、」 「ごめん、もう無理なの」 蔵にもらったネックレスを渡して、蔵の言葉を遮った。 もう戻れないよ、私達。もう歯車はとっくに回っていたんだから。 さよなら。ごめんなさい。でも好きだったから。今も好きだから。愛しているから、だから、さようなら。 20110621 prev//next |