>> 11

蔵と一緒っていう選択は、私には出来なかった。





「名前さん、これから俺がする話が迷惑やったらすいません」


光はやっと泣き止んで涙目で私を見た。そして光が私に伝えようとしてることがなんとなく分かった気がした。そして私はきっとそれを拒否する事なんて出来ないだろうという事も。


「俺、ちゃんと子供の父親になります」

「ひか、る…」

「ずっと好きやった。高校ん時からずっと見てたんすよ。せやから白石先輩の浮気知った時はチャンスや思ったんです」


ああそっか。だから光はあんなに私に色々してくれたんだ。何で早く気付いてあげられなかったんだろう。私はたぶん、ずっと光を苦しめていた。

私に拒否権なんてあるはずがない。光を苦しめていた分、私は恩返しをしなきゃいけない。


「名前さん、好き、好きや…めっちゃ好き…」


だから私も、光の愛に精一杯応えよう。


「私も光が好きだよ」


すると光は笑いながら私に言った。


「…下っ手くそな嘘やなぁ、…まあ、しゃーないっすわ。今は俺の事見てくれんでもええから。でもいつか白石先輩の事、忘れさせたる」





ごめんなさい。私、嘘つきになります。でもこれから光の事好きになってくから、どうか今だけは嘘をつかせてください。





20110618


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