>> 10 なんとなく、そんな気がしてた。 「蔵は?」 「帰りました」 「…そっか。この子、蔵の子じゃないもんね」 「分かってたんすか」 うん、分かってたよ。気付いてた。だって蔵は中に出したことなんて一回もなかったし。 「あの時の…だよね。」 光以外、思い当たらなかった。 でもね、本当は嬉しかった。蔵だって分かってたはず。自分の子じゃないって。それでも覚悟を決めたと言ってくれた蔵。もう一度あの頃みたいにやり直せるんじゃないかってそんな気がしてた、のに。 「…そうっすよ。名前さん、ホンマに…すいませんでした」 私の前で土下座をする光。やめて。そんな事させたいんじゃないの。むしろ光に迷惑をかけたのは私。蔵に会えない寂しさを埋めてくれていたのは光だったのに。 「謝らないで。私怒ってないから。寧ろごめんなさい…。私、光に迷惑かけないようにするから」 「は…、何言ってんすか…」 「子供には悪いけど…、私…、」 「アカン!それは絶対にアカン!!俺が居るから。俺がちゃんと父親になるから、そんなこと言わんといてください」 「ひか、る…?」 気付いたら光は私を抱きしめて…泣いていた。光は私のために泣いてくれているんだ。こんなどうしようもない私のために。 光が父親になるって事は私が光の人生めちゃくちゃにしちゃうって事なんだよ。光を一生縛り付ける事になっちゃうんだよ。 お願いだから、こんな私のために泣かないで。 20110616 prev//next |