やさしいあなた

「ねえ郭くん」

「…」

「郭くんてば」

「…何?」


郭くんに手を引かれて駅へと向かう。歩くのが早過ぎて追い付くのがやっとだった。

郭くんの考えてる事が分からない。いつも結人や一馬たちと一緒に私を性奴隷として扱っていたのに今日は何だか様子が違った。


「えっと…ありがとう。もうここまでで大丈夫だから」


駅に着いたから郭くんの手を離そうとしたら、郭くんの手が更に強く私の手を握った。何がなんだか分からない状況に一人でパニックになる。


「郭…くん…?」

「家まで送る。駅どこ?」

「え、だって郭くん家と逆方向だし…」

「別にいいよ。とにかく送る。ほら、切符買うよ」


私が渋々自分の住んでる駅名を伝えると郭くんは切符を2枚分買ってくれて、私に渡した。


「あ、お金…」

「いらない」

「でも…」

「電車くるよ。早く歩いて」


口調は決して優しくないんだけど、郭くんは今日は優しかった。郭くんは結人や一馬とは違ってセックスはわりと淡泊だった。だからこんな意外な一面に驚かずにはいられないわけで。


「何、人の顔じっと見て」

「えっとー…、郭くん意外と優しいなって思って」

「意外と、は余計。ていうか当たり前でしょ。俺達があんたに嫌な事させたんだからその分の償いはしないと」

「はあ…」

「ほら、着いたよ。ここで良いんでしょ?」

「あ、はい」


その後わざわざ郭くんは改札を降りて家まで歩いて送ってくれた。さすがに悪かったから家でお菓子でも出そうと思い、郭くんを家に招き入れた。


「家の人居ないの?」

「うん。お父さんがマンション持ってて再婚相手とそこに入り浸り」

「へーえ」


お茶とお菓子を用意して二人でリビングのソファに座った。今までもあまり話した事のない私たちの間には当然沈黙が走る。

さすがに気まずくてテレビをつけようとした瞬間、郭くんに腕を引かれソファに押し倒されてしまった。


「え…?」


よく分からない状況に目をぱちくりさせていると郭くんの唇が不意に私の唇に触れた。


「さっきの続きしたくなった。あ、もちろん普通にヤるだけだから。あんたの嫌がる事はしないよ。」


ただセックスするだけならいつもの事だし、私はいいよ、と二つ返事をして郭くんに抱かれた。





20111117


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