きづかないきもち


その後特に会話する事もなく、ほぼ沈黙状態で名前を家まで送っていった。

小さい頃、手を繋いで歩いたこの道。昔となんら変わりないのに、変わってしまったのは、俺と名前の距離。


「ありがとね。わざわざ家まで送ってくれて。」

「ああ。別に近いんだし、気にすんなよ。」


その分、いやそれ以上に体で払ってもらったわけだし。まあ性奴隷同様の扱いしてる奴にこんな事思うのもアレなんだけどな。ほら。ヤった後って妙に冷めて冷静に物事考えられるようになるから。多分それだ。


「じゃあね、一馬。」

「あ、ああ…、またな。」


またな…、か。名前にとってはあんま良い意味じゃないのにな。

そう思っていたら、自然と声が出た。


「名前」

「何?」

「体、しっかり休めろよ。次会う時使い物にならなかったら困るから」

「…うん、ありがとう。」


名前は少しだけ笑って(たぶん)、家の中へ入っていった。



奴隷に気を遣うなんて、俺らしくない。いつものようにヤりたい時にヤって、いらなくなったら即捨てる、女なんてそんな程度だったのに。

名前だからなのか。幼なじみだから、同情してしまっているのか。うん、きっとそうだ。ただの同情だ。ヤる時にはそんな気持ちなんて忘れてるに違いない。そしていつもの俺に戻るんだ。

俺は知らなかった。何かを守る勇気だとか、大切な人を思う気持ちなんて物は。ただ、目の前の快楽を感じて生きていく事しかしていなかった。

その気持ちに気付くのは、もう少し先のこと。





20101210


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