「まさ、は…、も…やめて…っ」
「まだまだこれからじゃき」
ええ声で鳴かんと、忍足殺すぜよと笑顔で言われて抵抗する術を失った。
こんなのおかしいよ。でも、悪いのはあたしなのかもしれない。あたしを愛してるよくれた雅治を裏切ったから。昔は確かに酷い事をされたりしたけど、一途に愛し続けられなかったあたしが、悪い。
「やんっ、あっ…は、」
「おー濡れとる濡れとる。もう入れても良さそうな頃じゃ」
「ふぅ、うう、ん」
噛み付くようなキスをされながら雅治があたしの中に入ってくる。ろくに慣らしていないせいか、濡れていても若干痛かった。生理的な涙が流れたけど雅治はそんなのお構いなしに一心不乱に腰を振る。
いつもの優しいセックスじゃなくて、まるで中学時代のあの頃のようなセックスだった。雅治の欲望のままに体を貪られるような、そんなセックスだった。
「お前、は、俺のモンじゃき…っ!」
「ひう、あ、ああ」
「ほら、今もこんなに濡らして…名前は淫乱じゃのう…」
縛られた腕も、擦れるソコも痛い。そういえば雅治に初めて犯された時もこんな感じだったな。
あたしはそれでも雅治を好きになってしまった。でももう今は…
「ん、まさ、はあ、…ごめ、ね…」
「…そんな言葉聞きたくないぜよ…っ!あっ…、出る…っ」
「あ、やん、は、ああっあああっ」
一番奥に雅治が精を出して、引き抜かずに繋がったままあたしの上に覆いかぶさった。
「はあ…っ、名前、お前がもし俺からまた離れるんなら…、忍足を殺すぜよ」
「なっ…!」
「冗談じゃなく本気、でな。」
雅治はそう言って立ち上がり、手早く服を着るとキッチンからナイフを取り出し、気絶してる侑士の頬に当てた。
「雅治…、やめて、よ…!」
「俺が死ぬって言ってもダメなら、こうするしかないぜよ。」
「雅治…、お願い…!」
「名前、二人で幸せになろうな」
侑士の頬から血が滲んだ。それからすぐ、ナイフを両手に持って勢いよく振りかざそうとしていた。
…雅治は本気で侑士を殺そうとしているんだ。
だったら、あたしが助けなきゃ。
「名前…、お前…っ!」
雅治のナイフがあたしの腕に浅く刺さった。雅治は動揺したのかナイフをすぐ抜いて、あたしの腕を縛って止血した。
「名前、ごめん…ごめんな、今消毒液とか持ってくるから」
その瞬間だった。
侑士の手があたしの手をそっと握るような感覚がしたのは。
「ゆ、うし…!」
「名前…、堪忍、な…」
「気が付いたんだね、良かった…」
「何も良いことなんてあらへんよ…本当はちょっと前に起きててん…せやけど体が動かんくて…、名前に怪我させて…、本当、すまんかった…」
「侑士…いいよ、大丈夫。あたし大丈夫だから。」
それから雅治が来てくれて、簡単な手当をしてくれた後、侑士の傷の手当てをしてベッドへ運んでくれた。
最後にごめんな、と言って雅治は部屋を出て行こうとした。
「雅治…っ!」
「ごめんな」
「ごめんね、ごめんね…雅治…」
「怪我、あまり痛むようだったら病院行きんしゃい」
「こんなの全然大丈夫だよ…っ」
「お前さんはすぐ俺に嘘つくからのう…信じられんぜよ」
雅治はあたしを抱きしめた。それから頭をポンポンと叩いて、キスをした。
「俺は諦めたわけじゃなか。またいつか、お前に会いに来るぜよ。だからそれまでは忍足に名前を貸しとくだけじゃ。」
「雅治…、」
「名前、愛しとうよ。今まですまんかった。あと、ありがとな」
雅治の最後の笑顔が、胸に焼き付いて離れなかった。
20110407