何が、どうして、こうなってしまったんだろう。
「名前…?」
「雅治…!」
部活を終えて急いで帰ってドアを開けたら、名前と…忍足?
何で二人が、抱き合ってる…?
「…っ、忍足…!」
気付いたら忍足を殴っていた。後ろのソファに倒れ込んだ忍足なんかお構いなしに名前を自分の方へ引き寄せた。
「何で忍足がここに居るんじゃ…」
「雅治違うの、あたしが…」
「名前は黙っときんしゃい。俺は忍足に聞いとる」
忍足は俺を睨みつけとったけど、そんなのは知らん。忍足が押しかけたのは分かってる。
それに名前にもまだ忍足に未練があるのだって知ってる。それに気付かない振りをして今まで過ごしてきた。いつか一番に俺を見てくれると信じてたから。
「名前に会いたいから、会いに来たんや」
「まだ名前を好きっちゅー事か?お前彼女居るって聞いとったけど」
「…あんなん名前の代わりや」
「はっ…、最低な男じゃのう」
「最低なんはお前やろ。知っとるで、お前が俺のファンに余計な事言ったってのは」
「何じゃバレとったのか」
名前の顔色が急に変わった。そりゃ驚く…よな。俺が忍足ファンに告げ口をして名前に嫌がらせをするように仕向けて、学校へ行くのをやめさせたのだから。忍足との関係を完全に遮断したつもりだったのに…
「雅治、ほんとに…?」
「ああ。ごめんな、隠しとって」
「嘘でしょ…?」
「すまん、名前と忍足を近付けたくなかったんじゃ」
二人のクラスが違ってホッとしたのは間違いなかった。忍足に彼女が出来たと聞いた時も。でも、それだけじゃ足りなかった。名前はまだ忍足を好きだったから。決して口にはしなかったけれど、名前を見てれば簡単に分かる事だった。
「あたし、侑士とはあれ以来全く話してなかったし、関わりもなかったんだよ?」
「でも名前は…忍足をまだ好きだったじゃろ?」
「そ、れは…」
「隠さんでも分かるぜよ。俺は独占欲が人一倍強いき、名前の心も全部欲しかった。」
一番に見て欲しかったんじゃ。
そう言うと名前は泣いてごめんなさいと俺に謝った。違う、こんな言葉が欲しいんじゃない。
「俺は名前を愛しとうよ」
忍足なんかに、渡さない。
「…名前は俺と仁王、どっちが好きなん?」
今まで黙っていた忍足が口を開いた。
どっちが好きか、なんて答えは分かっとる。でも名前は忍足が好きだなんて言える訳はない。そうしないと、俺がまた自殺してしまうかもしれんからのう…
「あたしは…」
「決まってるじゃろ、名前は俺を…」
「あたしは…侑士が好き」
「…!名前、お前…!!」
名前が何を言っているのか理解したくなかった。名前は俺ではなく、忍足を選んだのか…?
「ごめん、ごめんなさい…雅治…」
「俺がまた死ぬって言っても…お前は忍足を選ぶんか?」
「そんな事俺がさせへんよ」
忍足の言葉なんかもう耳に入って来なかった。忍足は名前の方へ行こうとしていたが、それをまた殴って制した。
「雅治、もうやめて…っ」
「…うるさい」
止めに入った名前を後ろへ突き飛ばした。痛くしてごめんな、でもこれは罰なんじゃよ。俺を選ばなかった名前への…そして忍足への。
気付いたら無抵抗の忍足を何十回と殴っていて、気付いたら気を失っていた。
途中で止めに入った名前も何度も殴って、突き飛ばした。名前は恐怖のあまりに俺を見ながら震えてる。
ああ、ゾクゾクする。俺は名前のこの顔が好きじゃった。恐怖に怯える、この顔が…
「名前、お仕置きはこれからぜよ」
怯える名前を、ベッドへ突き飛ばして組み敷いた。
20110401