「侑士…」
何で、どうして、侑士がここに来ているの?
「名前、良かった…。元気やったんか」
突然侑士に抱きしめられた。引き離そうとしても離してはくれない。むしろ、更に強く抱きしめられた。
「あ、お、忍足くんとりあえず中入ろ。」
半ば無理矢理侑士を部屋の中へ入れて、上がってもらった。
侑士が家に来るのなんていつぶりだろう。…不謹慎ながらあたしはドキドキしてしまっている。
「どしたの?突然…」
「俺のせいか?」
「えっ…?」
「学校、来てないんやろ」
「何で…、」
侑士は座っていたソファーから立ち上がってまたあたしを抱きしめた。
嫌がらせされてることなんて全然平気だったのに侑士に抱きしめられたら涙が出てきた。
「ごめんな…」
「何で侑士が謝るの?侑士のせいじゃないよ」
「名前、隠さんといて」
「ゆう、し…」
ごめん雅治、やっぱりあたし侑士が好き。抱きしめられて嬉しくなるのもドキドキするのも全部侑士が好きだから。
「ずっとこうやって抱きしめたかったんや…、でも名前に迷惑ちゃうかなってずっと考えてん。忘れるために好きでもない奴と付き合って…、でも無理やった。名前を忘れるなんて出来ひん」
「ゆう、し…」
「好きや、名前」
久しぶりに侑士の腕に抱かれて幸せだった。溶けそうなくらいの甘いキス、細くて長い侑士の指が肌を撫でる度に気持ち良くなって、侑士にしがみついた。
雅治に隠れてこんな事して、罰当たりなのは分かってる。でも…
「侑士、好き…」
「俺も好きやで」
「ごめんね…、あたし、ちゃんとしてなくて」
「分かっとる…せやから、大丈夫やで」
侑士は何度も何度も私に好きだと、愛してると言ってくれた。
神様ごめんなさい。もう少しだけ、このままで居させてください。
20110324