何でここに侑士が居るんだろう。あたしは確か殴られたり蹴られたりして意識失って…それから、

それから…?あれ、どうしたんだっけ。


「びっくりしたで。名前が倒れてたから」

「あ、うん…。侑…忍足くんが保健室連れてきてくれたみたいだね。ありがとー」


あたし、普通に出来てるよね。本当は内心ドキドキしてる。話したのなんていつぶりだろう。


「何かあったん?体調でも悪いんか?」

「あ、うん。最近寝不足でさ…」

「…ちゃんと寝なアカンよ。」

「うん、ありがとー、忍足くん」


とりあえず早く行かなきゃ。気が付いたらもう夕方だし、雅治は部活だけどもうすぐ終わるはずだし。

何より、侑士を前にしてあたしが普通に居られないから。


「じゃあね、本当にありがと。」


ベッドから降りて帰ろうとしたその時。足が痛くて思わず転んでしまった。


「いったぁー…」

「名前大丈夫か!?っていうか何やねん、この痣」


ああ、痣出来ちゃってたんだ。雅治になんて言えばいいんだろ。階段から落ちて転んじゃったーとか言えば大丈夫だよねきっと。


「ああ、転んじゃってさー。その時に打っちゃったんだー。」


じゃあ、急ぐから帰るねって言って保健室から出た。

もうこの場に居たくなかった。侑士の顔見てるのが辛かったから。何であんな悲しそうな顔をしてたんだろう。もうあたし達は何も関係なんてないんだよ?

胸が苦しくなった。もう大丈夫だと思ってたのに侑士のあんな顔見たらいてもたってもいられなくなった。





「名前、ちゃんと言いんしゃい」


例の痣を見られて困惑した。階段から落ちちゃってさー、の言い訳は通じなくて今は痣が出来た理由を問いただされてる真っ最中。


「だーかーらー、転んじゃっただけなんだってば!」

「その顔は嘘ついてる顔ぜよ」

「うぅ…」


言えるわけない。雅治に本当の理由なんて。侑士絡みって聞いたらまた自殺しようとしかねないし。

そう思ってたら雅治から思いがけない事を言われた。


「…忍足絡み、か?」

「な、んで…」

「少し前から背中に小さな痣がいくつかあったき、気になって調べてみたんよ」

「雅治…、ごめん…」

「何で名前が謝るんじゃ。とりあえずもう学校に行くのはやめんしゃい。」

「え…、でも…」

「大丈夫ナリ。俺に任せんしゃい」


そう言って雅治はあたしを抱きしめてくれた。

雅治、知ってたんだ。まあ…勘は昔から鋭いもんね。それよりびっくりしたのは雅治の反応。意外というか、全然普通だった。雅治、本当に変わったんだなぁ…





翌日もその翌日もあたしは学校に行かなかった。太郎ちゃんに事情を話したらあっさり認めてくれた。家で勉強をしっかりやる事を条件に、だけど。

肩の荷が降りた気がする。学校に行っても嫌がらせされるだけだし、侑士にももう会いたくないし。会ったらまた普通で居られなくなるのが怖かったから。





ピンポーン


突然チャイムがなった。誰だろう、こんな朝から。雅治は学校に行ってるし一人だから本当は出たくないんだけど…、雅治かもしれないしとりあえず出てみよう。


「はーい…、え…?」


ドアを開けるとそこにはあたしが今一番会いたくない人物が居た。


「何で…」



ねえ何で?どうしてあなたがここに居るの?


「侑士…」





20110324



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