「名前、受験勉強は進んでるんか?」

「まあ、そこそこ?」

「榊の力で受かりやすくなってるからって、油断してたらいかんよ」

「だーいじょーぶだって」


だって雅治が教えてくれてるし。太郎ちゃんの力で何故か特別枠にしてもらってるし。

雅治との約束で氷帝に残る代わりに、立海に行くって約束したもんね。

最近は雅治のおかげで学校にも真面目に行くようになったし、勉強だって見てもらってる。たぶんこの調子なら大丈夫なはず。



私は新しい生活に浮かれていた。たまに侑士を学校で見かけるけど、あたしは必死に考えないようにして、雅治の事をひたすら思うようにしていた。

このままならきっといつか、完璧に忘れられるはず。





「…」


でも学校でのあたしの扱いが変わった。今まではそこまで干渉してこなかった侑士のファンと思われる子たちが、あたしに露骨な嫌がらせをしてくるようになった。

前々から嫌がらせはされてたんだけど、あの時は侑士も居たし今ほどじゃなかったし…でも何で今さら?あたし達、もう何も関係がないのに。


「苗字さん、ちょっといい?」


あ、きた。最近は呼び出して殴ったり蹴ったりするのがあの子達の趣味らしい。


「あんたまだ忍足くんにしつこく付き纏ってるんでしょ」


知らないよ、そんなの。言い掛かりにも程がある。


「忍足くん超迷惑してるんだからね」


何それ。あたし最近は彼と話すらしてないんですけど。


「黙ってないで何とか言いなさいよ!」


バチン。

頬を殴られた。痛い。けど、我慢しなきゃ。この子達はあたしを数発殴れば気が済むんだから。逆にあたしが反抗しても騒ぎが大きくなるだけ。侑士にも知られちゃうかもしれない。

もう侑士と関わる事だけは極力避けたかった。


「これ以上忍足くんに付き纏ったら、学校来れないようにしてやるからね。むしろもう来んな!」


はいはい、でもごめんね。雅治が心配するから学校には行かなきゃいけないんですよ。

さて教室に戻ろう…と思ったその時。何だか今日は痛みが酷いみたいでまともに立ち上がれない。

やばっ…、痣とかいっぱい出来てなきゃいいけど…。傷を見られてそれが侑士絡みなんて雅治に知れたら、雅治はきっとおかしくなってしまうから。

あたしはそれが怖くて、雅治にこの事だけは言えない…





あたしはそれからしばらく意識を失ってたみたいで、気付くと保健室のベッドに寝ていた。


「せんせー…?」


カーテンの向こうに見えた人影に声をかけ、そのままカーテンを開けた。


「…!」


驚愕した。だって、そこに居たのは…


「名前、起きたん?」


侑士、だった…。





20110115



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