金髪の、美少女だ。
転校生が、来る。
この噂は広い学園内でも瞬時に広まった。
しかも可愛い女の子だと誰かが噂していた。クラスの皆がその転校生を心待ちにしていた。
学校に着いて先生が来て、後ろには噂の転校生ちゃんがくっついていた。
…ん、
あれ…?
よく見ると、先生の隣に居るその子の頭は金色で、顔を上げるとかなりケバめの化粧。
「いや、あれは派手すぎやろ…」
金髪、濃いめの化粧。目の周りは真っ黒でまつ毛がひじきみたいになってる。
そのくせ肌は雪のように白く、確かに美人なのだが…
「じゃあ苗字は一番後ろの席な」
ああ、俺の隣か。
って…何て偶然や。転校生ちゃんが俺の隣の席って…
「よろしくな、転校生ちゃん」
「…苗字です」
あれ、意外と大人しい子やん。
見た目の派手さから言ってキャピキャピしてて煩い奴かと思ってたんに。
「苗字ちゃんな。俺は忍足侑士。よろしゅうな。」
「…よろしくお願いします。」
何やこの子。極度の人見知りか?俺の周りにおる女のタイプと全然違う。
俺らに対して色目使う感じが全くない。
大抵の女は俺に一目惚れ(自惚れやなくて事実やから)しとったから、こんなに素っ気ない女はホンマに珍しい。
結局転校生ちゃんと一言二言しか話さないまま、放課後になった。
今日は部活がオフの日やったから適当にセフレとでも遊ぼう、と思った矢先。
「忍足くん」
転校生ちゃんに声をかけられた。
「どうしたん?」
「あの、駅までの道を教えてくださいな。」
「(朝来たやろ。覚えてないんかい…)」
「道全然覚えてなくて…先生の話聞いてたら教室に誰もいなくなっちゃって、友達も居ないし…忍足くんにしか頼めないのよ。」
何やこの子。どエライ方向音痴&天然なんかい。
「…ええで、転校生ちゃん。駅まで一緒に帰ろか。」
「…苗字です。」
俺はこの時、まだ何も知らんかった。
転校生ちゃんの事を、何も。