ぞくり。

もう雅治は居ないのに、何でこんなにも気配を感じるのだろう。



侑士と付き合って数日が経った。エッチだけの関係だったのが、いつの間にか好きになっていた。恋愛って不思議。少し前までは雅治が好きで堪らなかったのに、今は雅治より侑士に気持ちが傾いている。あたしって、軽い女なのかな。それとも、侑士に魅力がありすぎたせい?


「名前、何ボーっとしてんねん」


そんなこと考えてたら愛しいあたしの彼氏が現れた。やっぱり侑士と居ると安心する。

雅治の時とは、全身違う。


「侑士の事考えてたんだー。」

「ほんまに?可愛い奴やな」

「でしょー」

「ははっ、自分で言うなや。まあそんなトコも可愛いんやけど」


あたし、今幸せだよ。

人を好きになるって、こんなにも楽しくて嬉しいんだね。それを侑士が教えてくれた。


「あれから仁王には何もされてないん?」

「うん、携帯もまた変えたし連絡すら来ないよ。」


さすがに、こんなに連絡がないなら雅治だって諦めたはず。雅治には女の子がいっぱい居るわけだし。もうあたしなんていらないはずだから。


「侑士、今日部活は?」

「あるでー。本当はサボりたいんやけどな、鬼部長が許してくれへんから」

「うん、駄目だよ。てゆーかサボったらあたしが太郎ちゃんにチクっちゃうよ」

「あかん。それはアカン。」

「じゃあちゃんと出なさい」


ただでさえ試合前なんだから、と侑士の背中を押して彼は部活に行った。

寂しいから今日もご飯作って待っててあげよーっと。



オムライスか、ハンバーグか…。あ、面倒だから両方作っちゃお。

学校帰りに夕飯の食材を買うため、スーパーへ向かう。侑士んちの近くって安いのよねー。ついついいっぱい買っちゃうんだよね。

るんるん気分で夕飯の材料を買って侑士の家へ向かおうとした、その時。

携帯のバイブ音がなった。

侑士かな?もう部活終わったのかなー、早いなー、とか呑気に考えながら、携帯を開けた。


「…え、、」


知らないアドレスだったけど文章を見て驚愕した。



Sub 無題
―――――――――
お前に捨てられたら生きている意味なんてもうない。俺はもう死ぬことにした。今まですまん、忍足と幸せになってくれ

愛しとうよ、名前



これもペテン…なの?でも雅治はこういう事を言う人じゃない。こんな弱い姿、絶対見せないはず…。

私、どうすればいいの?また騙されるかもしれない。怖い、怖いけど…



ピ、ピ、ピ…

まだかろうじて覚えていた彼の電話番号に電話をかけた。



「まさ、はる…?」

「…名前か?」


侑士、ごめんね。これが最後だから。最後に、一度だけ…





20100104



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