どういう事かさっぱり分からないんやけど。
名前のちゃんの前居た学校はなんとあの立海大附属で、そこで性欲処理をさせられていた。しかも、テニス部の連中に。
立海のテニス部メンバーとはもちろん面識があった。まさかあいつらがそんな事するなんて…。
「しかもアイツ一応建て前上は仁王の女だったみたいだぜ」
「仁王て、あの詐欺師の仁王雅治か?」
「ああ。だが仁王には他にも女がたくさん居てな。その中で苗字が一番気に入られてたって訳だ。」
ああ、なるほどな。なんとなく分かったわ。名前ちゃんが転校してきた理由が。
名前ちゃんは、テニス部の連中から、仁王から、逃げて来たんやな…
「でも名前ちゃんはそんな辛い思いしたのに、さっき立海に戻るって言うてたで。」
「仁王がアイツを探していたらしい。転校した事さえ他の生徒に知らされていなかったそうだが、見事にシッポを捕まれたみたいだ」
ようやく全てが繋がった。あの時の最初の電話は転校の事を知ってる友達か何かで、2回目は仁王やったんやな。あんなに慌てて飛び出した訳もようやっと分かった。
名前ちゃん、脅されてるんやな、きっと。立海に戻る言うてたのも、多分仁王に脅されて…
「跡部、おおきに。スッキリしたわ」
「フン、俺様にはこれくらい容易い事だ」
「というか、何で名前ちゃんの事調べてたん?情報源は?」
「ああ、そんな事か。それはな…」
名前ちゃんはもう学校には居なかった。クラスメイトに聞いたところ、まだ帰ってからそんなに経っとらんから、走れば間に合うとの事。
急がなアカン。いつ立海に戻るかも分からん名前ちゃんを追わなければ明日には居なくなるかもしれん。そう考えると自然と俺の足も早くなる。
全速力で駅までの道を走る。駅に着いたら名前ちゃんらしき人物がおったから、すぐに話しかけようとした。
「名前ちゃん!」
「忍足くん…?」
名前ちゃんは、仁王と一緒やった。仁王は何も言わず俺の顔を見てフッと笑い、名前ちゃんの肩を抱いて改札に入ろうとしていた。
「…!待てや仁王!!」
「何じゃ、忍足か。」
「名前ちゃん、嫌がってるやん」
「嫌がってる?コイツが?…何馬鹿な事言っとるんじゃ。のう?名前…」
名前ちゃんは怯えた顔をして、頷いた。仁王が怖いんやな、きっと。
怯える名前ちゃんの腕を引き寄せ、仁王から引きはがした。そして離さないようにきつく抱きしめた。
「何するんじゃ、忍足」
仁王の顔が強張る。名前ちゃんは更に怖くなったのか、俺から離れようとしたけどそんな事は許さん。
「名前は、俺の女や。お前には渡さん。」
名前ちゃんが離れないように抱きしめる腕の力をギュッと、強くした。
仁王はそれを見て何故か笑っていた。
「はっ、お前も馬鹿な男ぜよ。こんな女好きになるなんて…」
「こんな女やない。俺にとっては大切な子や」
「ククッ…、そいつは誰にでもすぐ足を開く尻軽女じゃき、お前さんが思っとるようなヤツじゃないぜよ。」
「それは、お前が無理矢理させてた事やろ」
名前ちゃんの体が、ビクリと震えた。
「忍足くん、知ってたの…?」
「おん…、さっき知ったんや。」
名前ちゃんは俺の顔を見て、悲しそうな、申し訳なさそうな顔をしとった。
「クク…、忍足も名前も、馬鹿じゃのう。絶対後悔させちゃるきに」
最後に仁王が何か言っとったけど、そんなの知らん。名前ちゃんの腕を引っ張って、どこ行くかも分からないまま、足早に歩いた。
俺が守ってやらな、この子はまた仁王に脅されて好き放題されてしまう。今度は俺がしっかり守ってやらなアカン。
「忍足くん…知ってたんだね、私の事」
「ごめんな、勝手に調べて…」
「んーん。大丈夫。やっぱり太郎ちゃ…榊先生に聞いたの?」
「まあそんな感じや。正確には跡部から聞いたんやけどな。」
「そうだったんだ…」
学校には戻らず、跡部に迎えを頼んで俺の家に名前ちゃんを連れてきた。ベッドの上に名前ちゃんを座らせ、俺もその隣に座った。
少しの間沈黙が続き、何か温かい飲み物でも出してやろう、と立ち上がった。しかし、名前ちゃんが俺の制服の裾を掴んでそれを制止した。
「あたし、忍足くんが好き。」
「名前ちゃん…、何言うて…」
「忍足くんが好き、だよ。」
返事の代わりに名前ちゃんにキスをして、そのままベッドに押し倒した。
20111127