忘れかけた愛ひとつ




※「誰よりも愛した人」続編、土方ver.








「沖田さん…」


私を蔑むような目で見つめていた沖田さん。紡ぐ言葉が見つからなくて目を泳がせれば、ふと土方さんが私を引き寄せ自分の腕に引き寄せた。


「こいつは俺の女だ。返してもらうぞ」


土方さんはそう言って私を横抱きにし、冷えないように羽織りを着せてくれた。



それを見た沖田さんは刀を抜いて、土方さんの首元に突き付けた。あと僅かでその切っ先が肌に触れるか触れないかの距離で、私は思わず叫んでしまった。


「沖田さん!やめてください!」


土方さんは微動だにしなかった。ただ沖田さんの目をじっと見据え、眉間に皺を寄せたかと思えばすぐにその眉は下がり、切なそうな、悲しそうな表情に変わった。


「すまねえ、総司。こいつだけは渡すわけにはいかねえんだよ…!」

「…何言ってるんですか?手放したのは自分のくせに」

「女はもう全部清算した。今さっき千鶴を鬼に売ってきた」

「な…!?」


私も驚いた。私を捨ててまで大事にしようとしていた千鶴ちゃんをあろうことか私のために売り飛ばすなんて。


「総司。お前には許婚が居るんだろ?そいつを捨てて、名前を愛せるか?」

「…っ、それは…」

「悪いな。俺にはもう失う物なんて何も無えんだよ」


そう言って私を抱えたまま土方さんは家を出て、とぼとぼと外を歩き始めた。

沖田さんに貰った簪や櫛や着物、全部あの家に置いてきてしまったけれど、不思議と後悔はない。

―――だって彼は、私を選んでくれなかったから。

分かっていたはずの現実を突き付けられ、寂しさや憎しみよりも諦めの方が勝ってしまった。やっぱり私は彼に愛されない運命だったのだ、と…。





暫く歩いて、見慣れた懐かしい場所へとたどり着いた。土方さんは誰にも会わないよう人払いをしてくれたみたいで、ほぼ寝間着姿の格好を屯所内で晒される事もなかった。


「懐かしい匂いがします…。埃っぽいんだけれど、温かい木の香りが」

「埃っぽいは余計だ。………さてと、下ろすぞ。しっかり掴まってろよ」


土方さんの部屋の畳の上に下ろされ、彼はすぐに着替えを用意してくれた。その見覚えのある着物の数々は私が以前この屯所で着ていたもの。

土方さん、ずっと取っておいてくれていたんだ。全然高価でも何でもないこの安い着物を。


「お前がいつ帰ってきてもいいように取っておいたんだ。自分から手放した女を待つなんて、らしくねえけどな」


照れ臭そうに笑う彼を憎めるはずなんてなかった。沖田さんと引き離されたのはこの人のせいなのに、何故か彼を憎む気持ちは毛頭なかった。



だから彼の唇が私の唇と重なった時も、嫌だなんて思わなかった。

クチュリと厭らしい音が響いてお互いの舌を夢中で貪り合った。彼の舌を逃がさないように、彼も私の舌を逃がさないように必死に絡め合った。


「ん、はぁ…っ」

「ん…っ、好きだ、名前。お前だけを愛してる…」

「土方さん…」

「…名前で呼べ」


照れ臭そうにそう言った土方さんは私の着物を脱がせた。せっかく着たばかりの着物をもう脱がせられてしまうなんて、残念な気持ち半分、これからされる事に期待してしまっている自分が居た。


「歳三さん…、手が冷たいです…っ」

「しょうがねぇだろ、今の今まで外に居たんだからよ。つうか、その冷たい手に感じてるのはどこのどいつだよ」

「あっ…!そこ、だめですっ…」


きゅうっと乳首を摘まれて、大きな手が私の胸をやんわりと揉む。さっきしたばかりなのに、体は歳三さんを求めていて、私は簡単に乳首を立たせてしまう。

ちゅぱ、ちゅぱと歳三さんが私の乳首を口に含んで吸っている。普段は男らしい彼だけど、この時ばかりは赤ん坊のように見えてしまう。


「…何だよ」


私がそう思って笑っていたのに気付いたのか、不思議そうな顔で私を見てきた。ちゅぽっ…と胸から口を離して、歳三さんの手は私の足の間を割って茂みを掻き分け、敏感な突起に触れた。私の感じやすいところを全て知り尽くしているからか歳三さんの触れるところ全てが気持ち良くて太股まで蜜を垂らしてしまった。


「何だ、もうこんなに濡れてんじゃねぇか」

「あっ、はぁ…、歳三さん、気持ちい、です…っ」

「当たり前だろ、お前の良いところは全て知り尽くしてんだよ」

「ああぁっ…!」


中で指を折り曲げられればすぐに達してしまった。びくりと体が震えて肩で息をする私を見て歳三さんはフッと笑った。


「なぁ、もういいか?」


そう言って袴を脱いで大きくなったものを見せつける歳三さん。私がはい、と返事をすればゆっくり腰を下ろして濡れきったソコに歳三さんのが入れられ、激しく突き立てられた。


「はあ…っ!きもちい…っ!もっと、くださいっ…」

「とんだ淫乱だな。ま、こんな風に育てたのは俺なんだがな…っ」

「ああぁっ!…あっ、もっと、もっと…!」


激しい揺さぶりにだらしなく声を出しながら耐えていた。否、耐え切れていないから声が出てしまっているのだろう。でも歳三さんのはそれくらいに気持ちがいい。


「俺は、お前だけを…愛してる…」

「あ、ぁんっ、私も、です…っ」

「もう離さねぇ…」

「はい…っ、歳三さん、愛して、ます…っ」


歳三さんの精液が中に吐き出されて、余韻に浸っていればぎゅっと抱きしめられた体。手を握って絡め合っえば、昔歳三さんと恋仲になった時の事を思い出す。


「前にもこんな事あったな」

「…私も今同じ事考えてました」

「随分遠回りしちまったな」

「はい…。でもこうして歳三さんにまた会えたわけですから、それも良かったって思えます」

「悪かったな…。でももう離さねぇから」

「はい…っ!」



これから、あなたをもっともっと好きになる。あなたをもっと愛していく。

忘れかけた愛をもう一度、愛しいあなたと、やり直そう。





20120119



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