誰よりも愛した人
※「愛し方なんて知らない」の続編
寂しい、な。
沖田さんがお金を出してくれて住み始めた家で一人夕食を取る。沖田さんは隊務で忙しいから私はこうやって家で一人で過ごす時間が多い。
それ以外にも沖田さんは花街へ行ったり他の女性と会ったり…色々忙しいのだろう。
土方さんに貰ったお金を国に送り、私は沖田さんに生活の面倒を見てもらっていた。元々あまりお金を使わない彼の事だから、私に給金の大半をくれる。貯えもなかなかあったみたいで生活には何一つ不自由していない。けれど沖田さんの心までも欲してしまう私は相当な贅沢者だ。
そんなある日、私の家に来客があった。夕食を済ませ寝る仕度をしていた頃だったし、こんな時間に突然訪ねてくるのは沖田さんに違いないと思い寝間着のまま扉を開けた。
でもそこに居たのは、思いもよらない人だった。
「…久しぶりだな」
「土方…さん」
何で、どうして彼がここに居るんだろう。土方さんは私を捨てて千鶴ちゃんと一緒になったはずなのに。今更私に会いに来るなんてどういう風の吹き回しなのだろうか。
「こんなとこに住んでたのか…総司の奴、遊びの女にこんなに入れ込みやがって…」
「土方さんには関係ありません」
本当に今更何をしに来たというのだろう。沖田さんの悪口を言って、私を怒らせたいのだろうか。土方さんの意図が分からないままその場には沈黙が流れて何だか気まずくなってしまった。
「元気に…してたか」
「はい…、お蔭様で」
嫌味っぽく聞こえたかな。でもあれだけ酷い事をされたんだ。私にもこれくらい言う権利はあってもいい。土方さんは昔捨てた女の元へ何故訪ねて来たのだろう。千鶴ちゃんと別れた?それとも気まぐれに私をただ単に抱こうとしているつもりなのか。その真意は分からない。
「お前の体が恋しくなっちまってな…安心しろ、総司は今日は夜番だからここには来ねえよ」
「千鶴ちゃんは…どうしたんですか」
「千鶴はまだガキの体だからな。お前みたいにいい体してねえし体力もねえからな。1回抱いただけてへばっちまう」
それに比べてお前は…と、それ以上続く言葉に耳を傾けたくなかった。やっぱりこの人は最低だ。自分の性欲の収まりがつかないから私を抱きに来たんだ。
この人を一時でも愛した自分を悔やんだ。私はこんな人を愛していたのかと。
意地でも土方さんに抱かれたくなかった私は土方さんを睨みつけた。
「私はあなたに抱かれるつもりはありません。帰ってください。…そしてもう二度と来ないでください」
でも土方さんはその場から動く様子はなく驚いた表情をして私を見ていた。そして突然私の腕を掴み抱き寄せられてしまった。
「お前も随分と変わったなあ…そんなに総司に惚れてんのか?」
「…そうです!だから離してください!」
土方さんの腕から逃れようと必死にもがいてもびくともしなくて、もっと強く抱きしめられてしまう。そしていきなり唇に噛み付かれるような口づけをされた。
「お前の体に思い出させてやるよ。俺の体も形も、全部刻み付けてやる」
「やだ、やめてください…っ」
「こんないい体してんだ。総司一人に独占させてたまるかよ」
必死に抵抗しても土方さんの力には敵わなくて。寝間着を乱暴に剥がされ裸にされる。敷いてあった布団に押し倒され、土方さんは私の唇を貪った。
「んーっ!ん、んぅっ」
愛してもいない人との口づけがこんなにも苦しいものだとは思わなかった。あんなに大好きだった土方さんだけれど、私の心から彼はすっかり居なくなってしまった。
―――助けて、沖田さん。
心の中で叫んでも彼が来ない事は分かっている。寧ろこの状況を見て彼は私を助けてくれるのだろうか。はしたない女だと愛想を尽かされてしまうのではないか…。それなら逆に来てもらっては困る。大声を上げたら近所の人が気付いて、沖田さんの耳にもこの事が入ってしまうのではないかと思い、私はただ必死に耐えた。
ギュウギュウと強く胸を揉みしだかれ、指の腹で乳首をぐりぐりと摘まれる。感じたくないのに体は正直で、ピンと上を向いて立ち上がってしまっている。
「こんなに勃起させて、誘ってんのか?」
「あぁっ、違い、ます…っ」
「んな声で言われても説得力ねえよ。なあ、舐めてやろうか?」
意地でも舐めて欲しいなんて言うもんか。土方さんがこう言う時はおねだりをして欲しい時。私の口から卑猥な言葉を言わせたいのだろう。昔この人を愛していたから、全部分かる。彼が私にどうして欲しいのかなんて、仕種や言葉で全部分かってしまう。
けれど私は沖田さんに囲われている身。浅ましくおねだりなんて出来るはずもなかった。
「結構…ですっ」
「ああ?こんなに苦しそうにおっ立ててやがるのにか?」
「はい…、大丈、夫…、ひゃああぁっ!」
いきなり胸に電気が走ったのではないかってくらいの強い衝撃が走った。ふと胸を見ると土方さんが私の乳首を舐めていた。ちゅうちゅうと強めに吸い付かれ、たまに歯を立てられ甘噛みされる。反対側は相変わらず指で捏ねくり回され、胸だけで達しそうになってしまう。
「あ、はあっ、ぁんんっ」
「ここも触って舐め回して欲しいんだろ?」
「ひあぁんっ」
尿道を擦られ体がビクビクと跳ねる。乳首を舐められて尿道を触られただけで達してしまった。好きでもない人を相手に。私は相当な淫乱だ。
まだ余韻の残る私の中に指を這わし、私が感じる所を土方さんは激しく攻め立てた。彼はまだ覚えている。私の感じる所も、何もかも全部…。そして2本の指で掻き回され、私はまた呆気なく達しそうになる。
「あ、あんっ、もう、イっきそう、です…!」
「何度でもイけよ。俺に、狂っちまえ」
「あぁああんっ!!」
派手に潮を噴いて私は達してしまった。土方さんは手についた私の液体を厭らしく舐めとっている。美味しそうに、愛しむように舐める仕種に不覚にも子宮が疼いてしまう。
「入れて欲しいんだろ?」
「…だいじょぶ、ですっ」
「ったく、あんなに素直で可愛かった名前はどこ行っちまったんだ?」
「もう、やめてください…」
「誰がやめるかよ。まだ俺は満足してねえ。」
そう言って土方さんは私の脚の間に顔を埋め、達したばかりのソコに舌を這わせた。吸いながらべろりと舐められて土方さんの舌技に何回も達してしまった。
「あぁんっ、だめぇっ、もう、ああっ」
土方さんの頭を押さえても、自らのソコに押し付けるだけになり逆に煽ってしまう。もう快感に耐えられなくなり、私はとうとう雌豚に成り下がってしまった。
「もう、ください…」
屈辱的だった。でも熱を持った体は収まらなくて。土方さんの蔭茎で早く突いて欲しい。目茶苦茶に犯して欲しい。もうそれしか考えられなかった。
「何を、どうして欲しいんだ?」
ニヤリと笑う彼。もう自制心なんてものは私の中になくて、ただただ快楽が欲しいがために彼に浅ましく懇願してしまった。
「土方さんの大きいのを、私の中にください…。たくさん突いて欲しいんです…」
「…よく言えたな。褒美をやるよ」
土方さんの大きい蔭茎が中に入ってくる。久しぶりに感じる、沖田さんとは違う感覚に私は酔いしれてしまった。
奥まで一気に突かれ、肌のぶつかる音とぐちゅぐちゅと響く水音、そして私の喘ぎ声、土方さんの荒くなった息が部屋中に響く。何もかもが興奮材料になって私はまた蜜を溢れさせた。
「やっぱりお前は、最高だな…っ」
「あぁっ、ぁん、あっ」
「気持ち良いんだろ?」
「はいっ…、ん、気持ちいい、です、あっ」
「…っ、そんなに、締めんな…っ!」
土方さんは私の腰を掴んでさらに激しく揺さぶる。奥に亀頭がガツガツと当たり、私は何回も達してしまい、苦しくて土方さんの腕を掴んだ。そうしたら、土方さんは私を抱きしめたまま腰を打ち付けてきた。今さらこの人を愛しくは感じないけれど、懐かしくなって私もぎゅうっと土方さんを抱きしめ返した。
「何で、総司んとこに行ったんだよ…」
―――あなたに、捨てられたからなのに。
「俺を愛してるんじゃなかったのかよ…っ」
―――あなたが他の人を愛して、私を捨てたから。
「俺は、お前が、忘れられねえんだよ…っ」
そんな事言うくらいなら、私を捨てたりしなければ良かったのに。私はがくがくと揺さぶられながらそんな事をただぼんやりと考えていた。別に私だけを愛して、なんて贅沢な事は言わなかったはずだ。貴方の意志で勝手に私は捨てられたというのに。
「何で、今さら…」
本当に、何で今更私の前に現れたの?私はもう貴方を愛してなんかいないのに。それでも何故だろう。こんなに涙が溢れてくるのは。
「っ、…は、名前、出すぞ、」
「はいっ、出して、ください…っ」
「、あっ…!」
「ぁあんっ…!」
ビュクビュクと中に精液が流れて来て、土方さんの体も合わせて痙攣している。精液を逃がさないように子宮の奥に腰を何度か打ち付けられ、暫くしてから引き抜かれた。
私は土方さんが射精している間も涙が止まらなかった。懐かしい温もりや、彼の言葉に胸が痛くなって私は行為が終わってからもずっと泣いていた。そんな私を土方さんは優しく抱きしめて、頭を撫でてくれていた。
そういえば、前にもこんな事があった気がする。
土方さんの腕の中で、私は幸せを噛み締めながら抱かれていた。大好きだった温もりに懐かしさがまた込み上げて、涙がまた溢れた。
「…悪かったな、こんな事して」
お願いだから、そんなに優しくしないで。
土方さんも沖田さんも、私だけを見てくれているわけではない。私はどちらにとっても遊びの女。ただ囲われているだけの哀れな女なのだから。
途端、入り口の戸が開いた。こんな時間に突然訪ねて来るのは、彼しか居ない…
「何してるの?」
低い声で沖田さんが私達に尋ねた。今まで見た事もないような顔で私達を睨んでいる。
ああ、嫌われてしまったのかな。こんな浅はかで卑しい女、私が男だったらもう絶対に捨てている。
「まさか土方さんが人の女に手を出すなんてね」
ものすごく怒っているのだろう。蔑むような目で私達を見る沖田さん。
でも私は本当に恐ろしく浅ましい人間だ。こんな状況なのに、沖田さんが来てくれて嬉しく思っている。沖田さんに会えて安心している自分がいる。
「沖田さん…」
どんなに嫌われても、軽蔑されても、それでも私は貴方を愛してる。
それでも、私は…
20111215
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