愛し方なんて知らない
※「欲張りな愛」の過去編
生きるためなら何でもするつもりだった。でも私は、呆気なく貴方に堕ちた。
ある日私は新撰組に売られた。家を、家族を救うために、新撰組副長の土方さんに買われた。
小姓なんて表向きだけ。実際は土方さんの性処理の道具。
「後で部屋に来い」
今夜も私は土方さんの玩具に成り下がる。これが私の運命。逃れられない宿命。
土方さんの部屋へ入ると仕事をしていたのか、机に向かって忙しなく何かを書いていた。土方さん、と声をかけたら私の方を振り返ってその手を休める。
「お仕事大変みたいですね。熱いお茶をお持ちしました。あとこちらをお夜食にどうぞ」
夕食もろくにとらなかった土方さんの為に握り飯を作って持って来た。一応表向きは小姓だから、私は土方さんのお世話は全部していた。
もちろん、あっちのお世話だって…
「飯は後で食う。それより、これを頼む」
土方さんは袴を脱ぐと、何もしていないのに大きくなった陰茎を私の顔の前に出した。私はそれを何の躊躇いもなく口に含む。
いつものように亀頭を包むようにしゃぶって舐めれば土方さんは小さく息を吐いた。これは感じている証拠。私もだんだん興奮してしまって、土方さんのモノを夢中で舐めた。
「…っ出すぞ」
「んんっ…!ん、ん、はあっ…、………おいしい、です」
射精した精液を飲み込めば満足そうな顔をする彼。土方さんは口淫をひどく好む。精液を嬉しそうに私が飲み込むと、土方さんは凄く喜んでくれる。
「お前は本当に厭らしい女だな」
「ありがとうございます」
「素直なところも可愛いぜ。さてと、んじゃ入れてやるから着物を脱げ」
「はい…」
するすると着物を脱いで裸になり、土方さんの首に腕を回して抱き着いた。間もなく唇が重ねられて、舌を舐め取られ深い口づけを交わした。
いつもこの瞬間に思う。彼が愛しいと。
私はそれを口にする事は出来ない身分だから決して自分の気持ちは伝えられないけれど、彼に抱かれて、必要とされている事がただただ嬉しかった。
「土方さ…」
「黙ってろ。気持ち良くしてやるから」
「はい…、ああっ」
くちゅり、と中に指が入ってきて激しく動かされる。土方さんの愛撫はとても気持ち良くて、口元を手で覆っていても声が勝手に漏れてしまうくらいのものだった。
段々激しくなっていく愛撫に耐えられなくなり達しそうになった時に、急に指を抜かれた。
何で?って顔で土方さんを見れば、彼も我慢出来なくなったのか大きく主張している陰茎を私のそこに擦り付けた。
「あぁっ…!あ、土方さん、早く、ください…」
「何だ、だらしなくねだって。でもまあ、俺も我慢出来ねえ。入れるぞ」
土方さんの陰茎が私の中に音を立てて埋められていく。あまりの気持ち良さに体がのけ反って入れただけでまた達しそうになった。
「あぁ、ぁあんっ、すごいっ」
「そんなに気持ち良いのか?」
「はい…っ、凄く、良い、ですっ」
「じゃあもっとくれてやらねぇとな」
「あぁっ、んぁああっ!」
気持ち良すぎて何も考えられなくなる。ただ目の前で腰を打ち付けている彼が愛おしくて、与えられてる快楽が極上過ぎて、それを感じる事だけに専念していた。
しばらく突かれた後、土方さんは私の体を横たえてまた律動を始めた。先程とは違うところに当たって快楽の波が押し寄せてきた。
「はぁ、あんっ、土方さん、もう、だめですっ…」
「オラァっ、イっちまえ、よ…!」
「ああぁんっ!」
激しい律動に耐えられず、体をびくびくと震わせて達してしまった。まだ余韻が残っているというのに土方さんは私をまた揺さぶった。
「ああっ!達したばっか、なのにぃ…っ」
「関係ねえよ。それより、俺もイきそうだ…っ」
「はぁ、中に、中にくださいっ…」
「ああ望み通りくれてやる…!くっ…、出す、ぞ」
「はい、あ、ひあぁっ、ああ…」
中に温かい精液の感覚が広がって、私はそのまま土方さんに抱き着いた。土方さんも私を抱きしめ返してくれて、二人で寄り添うように布団へ入った。
繋いだ手から伝わるのは土方さんの暖かさ。寄せられた胸からは土方さんの心臓の音が聞こえた。達したばかりの荒い呼吸を整えながら、土方さんは私に言った。
「お前は自分の意志で俺に抱かれているんだよな?」
「はい、土方さんに抱いて頂きたくて来ています」
「…そうじゃねえよ。お前は俺を好いているから来てるのか聞きてえんだ」
突然こんな事を聞かれて、私はどう答えればいいか戸惑った。でも今は伝えても良いような気がして、私は正直な事を話そうと決心した。
「…はい、お慕いしています。」
「本当か?」
「はい。私みたいな者が土方さんの恋仲になれるとはもちろん思っていません。ただ私はこうして土方さんと共に居れる事が幸せなんです」
不意に体をぎゅっと抱きしめられた。目の前には土方さんの切なそうな顔が映って胸が締め付けられた。
「俺も…お前が好きだ」
「土方さん…?」
「小姓としてなんて、もう見れねえ」
途端、口づけられ激しく唇を貪られた。私もそれに応えるように目を閉じ彼の口づけを必死に受け入れた。
思い合えたんだ、私たちは。土方さんも私を愛してくれていた。それが何よりも嬉しかった。それから私たちは毎晩体を重ねた。愛を囁き合い、口づけ合い、お互いを求めた。私は土方さんの小姓で居られる事に最高に幸せを感じていた。
そんなある日。屯所に新しい顔が入ってきた。格好は男子そのものだったけれど、私はすぐに分かった。この子は女の子だ、と。
それでも私は変わらず土方さんの小姓を続けていたし、毎晩愛し合っていた。それはこれからも変わらないと、ずっと思っていた。
「名前、話がある」
「はい」
土方さんに呼ばれ部屋へ行くと、そこには先日来た女の子…千鶴ちゃんが居た。
千鶴ちゃんと二人で何か用を言い付けられるのかと思っていた。でも土方さんが発した言葉は意外なものだった。
「お前には小姓を辞めてもらう」
「…え?」
土方さんはとうとう私と夫婦になってくれるのかと思ったけれど、それだったら千鶴ちゃんが居るのはおかしい。それにこの場の雰囲気がそんなに甘いものではないと感じさせている。
「金は、払う。明日にでも出て行ってくれ」
「…それってどういうことですか?」
すると土方さんは千鶴ちゃんの肩を抱き寄せ嘲笑うかのように私に吐き捨てた。
「千鶴を俺の小姓に付けることになった。言い忘れていたが、俺達は恋仲でな」
「え…?」
信じられなかった。
目の前で幸せそうに、愛おしそうに千鶴ちゃんを見つめる土方さん。頬を赤らめて土方さんに寄り添う千鶴ちゃん。
嘘だと言って欲しかった。だって私はこんなにも土方さんを愛していたのに。
「生きていく上で困らない程度の金はやるから、ここにはもう二度と来るな」
確信した。私は土方さんに、捨てられたのだと。
二人を見ているのも辛くて、「わかりました」とだけ告げて部屋を出た。
明日とは言わず今夜中に出て行こう。
荷物をまとめ自室を出たその時に、縁側に腰掛けていた沖田さんが私を見ていた。
「振られちゃったみたいだね」
「はい…」
沖田さん、こんな時間に起き上がっているなんて、体調は大丈夫なのかな。そう心配しながらも早く出て行きたい気持ちも強くて、私は挨拶もそこそこに草履を履こうとした。
「待ちなよ」
「沖田さん…?」
「行くとこないんでしょ?僕が、拾ってあげようか?」
可哀相な迷い猫ちゃん。そう言われて。私は沖田さんに拾われる事になった。
もうどうにでもなれ、と心の中で呟いた。
20111205
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